「マタニティヨガ」は妊娠中のヨガとして有名で、これから始めたいと考えているママも多いのではないでしょうか。しかし、ヨガポーズの中には妊婦さんがやってはいけないポーズも…。
元気な赤ちゃんを出産するために役立つヨガですが、取り組むなら妊娠期間にあった方法で実践することが重要です。
今回の記事では、妊娠中におけるヨガの効果に触れてから、妊娠期間ごとの注意点や危険なポーズについて解説します。
妊娠中のヨガ・瞑想に期待できる7つの効果とは?
妊娠中に行えるマタニティヨガや瞑想には、妊娠・出産に役立つさまざまな効果があることをご存知でしょうか?
気持ちをリラックスさせたり運動不足を解消したりできるだけでなく、心身にさまざまなメリットをもたらすのが妊娠中のヨガです。
深い呼吸により胎児への酸素・栄養の供給がスムーズになる
ゆっくりと息を吸い、深く長く吐く呼吸が特徴的なヨガ。特有の呼吸法で体内に酸素を多く取り込むことによって、胎児への酸素や栄養の供給がスムーズになるとされています。
妊娠をして子宮が大きくなると肺が圧迫されて呼吸がしづらくなりますが、ヨガの実践は赤ちゃんに新鮮な酸素とともに栄養素を送り届けるために役立ちます。
ストレスが解消され心が穏やかになる
ヨガにストレスを解消し心を穏やかにする効果があることはよく知られています。
妊婦さんのストレスは胎児の発達に良くない影響を与えることがあるため[1]、ヨガによる妊娠中のストレス解消は大切なこと。妊娠中はうつ症状があらわれやすい時期ですが[2]、ヨガを実践すると不安感や気分の落ち込みが軽くなります[3][4]。
睡眠の質が高まりつわりが軽くなる
妊娠中のヨガには、睡眠の質を高めてつわりを軽くする効果も期待できます。妊娠中は睡眠不足になりがちで、心身の疲れが取れきらないとつわりもより敏感に感じてしまいがち。
ヨガには睡眠を改善して疲労を回復させる効果もあるため[3]、妊娠中の体調管理に役立つはずです。
妊娠中の腰痛や便秘解消に最適
マタニティヨガのポーズの中には、妊娠中の悩みとして多い腰痛や便秘を解消する効果もあるため[4]、日々の小さな身体の悩みを改善してくれます。
妊娠中のヨガが推奨されるのは、お腹が大きくなり腰が反る姿勢になりがちな妊娠中の腰痛や便秘、不安感も含め、妊娠中のさまざまな不調を取り除く効果が期待できるためです。
妊娠中の運動不足解消に効果的
ヨガはゆったりとした動きが特徴ですが、筋肉や関節をほぐすストレッチ効果と、酸素を消費する有酸素運動の効果を兼ね備えたエクササイズです。
妊娠中は自由に動きにくく運動不足になりがちですが、定期的にヨガを行うことで運動不足が解消されるとともに、健康・体型の維持に貢献してくれるでしょう。
お産のための体力作りに役立ち安産が望める
マタニティヨガには筋肉をほぐすことで出産に向けての体づくりが行えるメリットもあり、妊娠中だけでなく出産にも効果的な健康法です。
マタニティヨガを実践した女性は、分娩時の痛みが軽くなり、分娩時間が短くなったという報告もあります[4]。女性の人生の中で最も体力が必要だと言っても過言ではない出産。
しっかりと体力をつけて、より楽に分娩できるよう働きかけてくれるのが妊娠中のヨガです。
「妊娠をしている」ことへの幸福感が高まる
ヨガに精神的な効果があることは前述しましたが、妊娠中にヨガをすると「妊娠をしていること」への幸福感が高まると言われています。
自分自身の中で新たな生命を育み、誕生させる出産。赤ちゃんが生まれ育っていく今後の人生も含め、妊娠をしたことへの幸福感を最大限に高められれば、日々のどのようなことにも感謝しながら幸せに過ごせるでしょう。
ヨガには妊娠中にダメなポーズがある?赤ちゃんのためにやってはいけないポーズをチェック
マタニティヨガにはさまざまな効果が期待できますが、妊娠中のヨガはポーズを選ぶことが大切です。お腹の中にいる赤ちゃんを守るため、妊娠中にやってはいけないポーズを徹底解説します。
お腹に負担がかかるヨガのポーズ
ヨガにはお腹に負担がかかるポーズがありますが、妊娠中は必ず避けるようにしてください。
お腹の筋肉を伸ばしたり、縮めたりするポーズは胎児を圧迫してしまうことがあります。
インストラクターから学ぶマタニティヨガであれば問題ないでしょうが、自宅でヨガを実践している方は、次のようなポーズは避けましょう。
- バッタのポーズ
- 弓のポーズ
- ガス抜きのポーズ
- 船のポーズ
- ダニュラーサナ
- アップドッグ
- ウールドヴァ
- プラサリータ
- パダーサナ
- サヴァーサナ
ウエストをねじるヨガのポーズ
ヨガに多いウエストをねじるポーズも、妊娠中はやってはいけません。
ウエストをねじるということは、子宮周辺の筋肉もねじれる可能性があるということ。お腹に負担がかかるポーズと同じように、次のようなポーズでは胎児に負担をかけてしまいかねません。
- 三角形のひねりのポーズ
- ねじった椅子のポーズ
- アルダマツエンドラーサナ
転倒の可能性があるヨガのポーズ
お腹周りに負担をかけなくても、転倒の危険性があるヨガポーズも避けるようにしてください。
ヨガに慣れている方であっても、お腹が大きくなるとバランスを崩しがちなので注意が必要です。
転倒の危険性があるポーズとは、次のとおり立位で不安定な体勢になるポーズや、逆立ち、肩立ち、逆向きのポーズなどが該当します。
- 木のポーズ
- 逆立ちのポーズ
- 半月のポーズ
- 英雄のポーズIII
- シルササナ
リングフィットも要注意
ヨガエクササイズも収録されている、任天堂Switchのソフトである「リングフィット」。
ゲーム感覚で挑戦しようとする妊婦さんも多いでしょうが、妊娠中は控えることをおすすめします。
リングフィットのエクササイズの中には、腹筋力が必要なものがあるので胎児に負担がないとは言い切れません。
リングフィットは妊婦さんのためのエクササイズゲームではないため、プレイしたいと考えている方はかかりつけ医に相談した上で行うようにしましょう。
妊娠中のヨガはいつからいつまでOK?妊娠期間にあわせて適切なマタニティヨガを実践しよう
妊娠中に行うヨガの効果や注意点、やってはいけないポーズをご紹介してきましたが、妊娠の時期にあわせて実践するヨガを変えることも大切です。
妊娠初期と中期~後期、出産後では行えるヨガの内容が全く変わるので、妊娠期間ごとのヨガの特徴を把握してから実践してください。
【妊娠初期】ヨガ初心者の方は流産のリスクも…呼吸法を意識して安全なヨガを
妊娠初期は胎児が安定しておらず、ヨガなどの運動で体に負担をかけると流産をするリスクもあります。
一般的に、マタニティヨガは妊娠13~20週目以降から始めることが基本。初心者の方が妊娠初期にヨガをすることは危険です。
行うならポーズではなく呼吸法を重視して、リラックス効果を得るためのヨガを行いましょう。
ただし、今までヨガを続けていた経験のある方であれば妊娠初期に行える場合もあります。
ヨガを習慣にしていた方がヨガを行えなくなるとストレスの原因になることもありますし、ヨガを熟知している方ならお腹に負担がかからないポーズを選ぶこともできるため、かかりつけの先生やインストラクターに相談をして許可を得られたら実施しましょう。
妊娠初期に気づかずヨガしてしまった…そんなときはどうする?
ヨガを毎日の習慣にしていた方であれば、「妊娠初期に気づかずヨガをしてしまった…」ということもあるはずです。
しかし、妊娠に気づかないくらいの超初期の段階では、ヨガなどの運動が直接的な流産のリスクになることはないと言われています。
最新の研究によると、妊娠初期に1週間で27.8メッツ以上の運動をしていた妊婦さんは流産のリスクが高まると報告されていますが[5]、ヨガは1時間で2.0~4.0メッツ程度の運動強度です[6]。
1日30分のヨガを毎日行ったとしても1週間で7.0~10.5メッツであり、運動強度の高いパワーヨガでも14.0メッツ。胎児に悪影響を与える運動量ではないと考えられますが、不安な方は医師にヨガをしていたことを相談してください。
【妊娠中期~後期】医師・ヨガインストラクターの許可を得たらマタニティヨガを始めよう
安定期に入ってくる妊娠中期から後期は、医師やインストラクターの許可の基、安全にマタニティヨガを始められる時期です。
最初にご紹介したような数々の効果を得るために、定期的にヨガを行うことをおすすめします。妊娠中のヨガは出産直前まで行えますが、体に負担がかかりすぎないよう休憩をしながら行いましょう。
【出産後】骨盤底筋を鍛えて痩せるための準備を!
ヨガは妊娠中だけでなく出産後の運動としても役立ちます。妊娠・出産を終えた女性は骨盤がゆるむと言われていますが、ヨガで骨盤底筋群や股関節周りを鍛えれば、産後ダイエットとしても効果的であるためです。
運動強度が低く体力がなくても実践でき、効率的に筋肉を鍛えられるヨガは、出産を経て体力を失った女性に最適なエクササイズだと言えます。
ヨガスタジオに通いたい!妊娠中にヨガ指導を受けるときの注意点
「妊娠中のヨガが効果的なら本格的にやりたい!」と、ヨガのスタジオやクラスに通うことを検討されている方もいるかもしれません。
しかし、妊娠中のヨガで注意するべきことがあるのは事実。ヨガスタジオに通う際に注意するべきことを3つのポイントを見ていきましょう。
ホットヨガは避ける
最近人気が高まっているホットヨガは、妊娠中に避けるべきヨガの代表的存在です。
高温多湿の環境でさまざまなポーズに取り組むホットヨガは、妊婦さんの脱水症状を招くだけでなく、子宮に負担をかけてしまう恐れもあります。
ヨガスタジオを選ぶ際には、ホットヨガではなく通常の環境で行うヨガを選択してください。
プライベートレッスンを受けることが理想
妊娠中で体がデリケートな状態になっていることを考えると、やはりプライベートレッスンを受けられるクラスを選ぶことがおすすめです。
マンツーマンであれば、もしレッスン中に体調が悪くなったり、足や膝への負担が大きかったりしても、インストラクターからの対応が受けられるので安全にヨガに取り組めます。
ただしプライベートレッスンは料金が高めなので、体験レッスンを受けてしっかりとレッスン内容を確認してから入会することがポイントです。
ゆったりとした体を冷やさないウェアを選ぶ
ヨガウェアはぴったりと肌にフィットしたレギンスやタンクトップが一般的ですが、妊娠中はゆったりとしていて、体が冷えないことを重視して服装を選びましょう。
レギンスではなく、スローチーパンツやシャルワール、ウエストがゴムになっているゆるやかなボトムスなどを選ぶことが基本。体が冷えないよう温かなインナーを着用するようにします。
妊娠中のヨガはトラブルの可能性も考慮して!無理のない動きで体調を整えよう
「マタニティヨガは意味ない」と言う方もいますが、妊娠中のヨガにはストレス・運動不足・腰痛・便秘解消、安産のための体力づくり…とさまざまなメリットがある上に、体の柔軟性も高められて、筋トレメニューなどより体に負担がかかりません。
しかし、お腹の中に赤ちゃんがいることを考慮して、無理のない動きで実践することが大切です。
最近ではアプリの情報や配信動画を見ながらマタニティヨガを実践することもできますが、妊娠初期は特に、医師やヨガインストラクターに相談をしてからヨガに取り組みましょう。
ヨガをしたことがない方でも、妊娠を期にぜひヨガを体験してみてください。背骨や手足の筋肉がぐっと伸びて、心身ともに変化が起こることを実感できるはずです。
[1]参照:JSTAGE:妊娠期の母体ストレスと脳機能形成異常
[2]参照:e-ヘルスネット:妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療
[3]参照:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIM:ヨガ
[4]参照:JSTAGE:妊娠中のヨガ(マタニティ・ヨガ)の有効性に関する文献的考察
[5]参照:リンク・デ・ダイエット:妊娠初期の運動し過ぎは危険大
[6]参照:国立健康・栄養研究所:改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』