「ツェルト」とは緊急用の簡易テントのことで、万が一のときのため、ザックに忍ばせている方も多いものです。
しかし、ツェルトの設営経験がない方にとっては、使い方がわかりにくいものでもあります。
そこで、登山で便利な6つの使い方について解説します。
基本的な使い方だけでなく、最初のツェルトとしておすすめの製品や知っておくと便利な知識もあわせてご紹介するので、いざというときのために知っておいてください。
ツェルトとは?使い方の前に特徴や機能性を知ろう
「ツェルト」もしくは「ツエルト」とは、コンパクトで軽量な緊急用の簡易テントのことです。
遭難をしたとき、ビバークが必要になったとき、急に天候が荒れだしたときに使用します。
ただし、最近ではザックが軽くなるからという理由で、通常のテント代わりとして用いられることも多いです。
ツェルトとは
ツェルトの特徴と機能性
ツェルトの最大の特徴は、非常に軽く持ち運びしやすいという軽量テントだというです。
防水性・防風性に優れており、上手に活用することで、遭難やビバークの際の体温低下を防いでくれます。
また、テントのように説明するだけでなく、使い方のバリエーションが豊富なことも特徴のひとつです。使い方のバリエーションについては、次の項目で解説します。
ツェルトとテントの違いは?
ツェルトは一見テントのようですが、登山用テントよりも張り方が簡単で、緊急用として適していたつくりになっています。
テントよりも軽量で、収納や持ち運びが簡単であることも違いのひとつです。
ただし、テントと比較してメリットばかりではありません。ツェルトはテントよりも居住性が低く、宿泊時の快適性を求めるなら登山用テントの方がおすすめです。
また、テントより生地が薄い製品が多く、防水性や耐久性も低くなっています。
ツェルトは登山に持っていくべき?
ツェルトは登山時に絶対に必要なものではありませんが、いざというときに、持っていないと命の危険にさらされる可能性もあります。そのため、登山では持っていた方が良いものです。
急に悪天候になったとき、怪我をして動けなくなったとき、道に迷ってビバークを余儀なくされるときなどは、ツェルトを持っているだけで身体への安全性が高まります。
登山での使い方は?ツェルトが必要になる5つのシーン
ツェルトは登山で持っていた方が良いものですが、一体どのようなシーンで必要になるのでしょうか。
ツェルトが必要になる5つのシーンを知れば、登山にとってどれほど重要な存在かわかるはずです。
ツェルトが必要なシーン
ビバークをする
ツェルトを使うシーンとして最も基本的なものは、緊急時にビバークをするときです。
怪我や病気、道に迷って野営が必要になったときなど、ツェルトをテント代わりとして設営すれば、何もないビバークよりも遥かに快適に、安全に一夜を過ごせるようになります。
体温低下を予防したい
急な悪天候などで体温低下を予防したいときは、ツェルトにそのままくるまったり、頭からかぶって防寒したりすることもできます。
ツェルトは体に直接まとう使い方も想定して作っているため、設営方法を知らなくてもいざというときに役立つものです。
着替え場所や簡易的な荷物置き場を作りたい
沢登りなどで着替えたいときや、簡易的な荷物置き場を作りたいときにもツェルトが役立ちます。
ツェルトはテントのように設営しなくても、木に結びつけて簡単に使えるため、ちょっとした目隠しが欲しいときに便利です。
女性は登山中の着替え場所に困りがちですが、ツェルトがあればどこでも目隠しが作れます。
タープとして雨よけ・日よけに使う
ツェルトは地面に接する部分がなく、張り網とペグで固定させれば雨よけ・日よけのためのタープとしても使えます。
夏の時期であれば、緊急用だけではなく日よけ用としてツェルトを使えば、より一層快適なアウトドアが楽しめるはずです。
雪よけ・風よけとしての使い方
ビバークでは雪洞を掘ったり、土に穴を掘ったり、木の根元の大穴に身を隠すことも想定されます。
ツェルトで穴の出入口を覆えば、雪よけや風よけとしても活用可能です。雪や風にさらされると体温がすぐに低下してしまうので、命を守るためのアイテムとして重要な役割を果たします。
ツェルトの使い方6選をマスターしよう
近所の広場でツェルトビバーク練習。
「アライテントスーパーライトツェルト2ロング」
ビバークで6人座れちゃいます。
緊急ビバークだととにかくスピードが大事。
しめはクレイムハイストで。
暴風にはこのスタイルで、雨の場合は、つたうのでメインロープにツェルトを吊るすスタイルになります。 pic.twitter.com/PJCgAdo8Sc— 山のパティシエ「Hisa」 (@Hisa60672477) April 14, 2020
ツェルトは登山で活躍するシーンの多いものですが、使い方によってさまざまな形状で使えます。
こちらではツェルトの使い方を6つご紹介しますが、すべての使い方をマスターすれば、ツェルトをフルに活用できます。
使い方6選
基本となる設営方法
まずは、張り網とメーカーが販売しているポールを使った基本の設営方法です。
- ツェルトの紐を結び、ストラップに張り網をそれぞれ2本ずつ付ける
- ツェルトがたるまないように四隅にペグを打つ
- 片方ずつポールを立ててペグに張り網を固定させる
いざというときにすぐに設営できるように、1の工程はあらかじめ済ましておきましょう。ストラップに張り網をセットしておけば、基本的な設営方法でもすぐに張り終えられます。
トレッキングポールを活用した使い方
ツェルトのポールの代わりに、トレッキングポールを使っても設営できます。張り方は、先に解説した基本の設営方法と同じです。
トレッキングポールを使うことと、ポールを持たない分ザックの重量が軽くなることで登山時の疲れが軽減されるため、実用的な使い方として覚えておきましょう。
ペグなしの使い方
ツェルトはペグなしで張ることもできます。基本の設営方法で、ペグの代わりに重量のあるものを使うだけです。
周辺に落ちている重い石や水の入ったペットボトルなどを活用してください。
実際に緊急用としてツェルトを使うときは、ペグを打っている余裕がないという場合も多いものです。ペグがなくても設営できるということを覚えておきましょう。
ポールがないときの使い方
ポールもなく、トレッキングポールもないというときでもツェルトは張れます。
テントのようにしっかりとした形状ではありませんが、周辺にある木の枝にツェルトを結びつければ空間をつくり出すことが可能です。
ツェルトを木の枝からぶらさげるような使い方で、目隠しとして使うときも役立ちます。
雪の中での使い方
雪の中でツェルトを使うときは、ピッケルやスコップなどをアンカーとして使うこともできます。
ツェルトの四隅の輪に紐を通しておけば、雪の中でペグを使わなくても簡単に設営が可能です。雪の中でのビバークは危険性が高いので、出発前に紐を通してセッティングを済ませておくことをおすすめします。
ロープを利用した使い方
長いロープを持っていれば、木と木の間にロープを渡してツェルトを張れるようになります。
ツェルトにはベンチレーターと呼ばれる換気用の穴がついているので、そこにロープを通して、両端を木の幹に結びつければ設営できます。
ポールを使う方法よりも圧倒的に短時間で設営できるので、緊急時に最も役立つ使い方です。
軽量で高機能!最初のツェルトとしておすすめなのはコレ!
初めて山で一夜過ごしたのは2010年の北岳。
泊まるつもりなかったけど景色が綺麗すぎて夕焼けも見たくなり、そのまま寝袋もマットも無いままツェルトで寝た。とても寒くて辛かったけどあの時見た景色は特別思い出に残っている。
#初キャンプと現在を貼れ pic.twitter.com/yXbFH9wjba— @もーまん (@mo_man0) September 19, 2022
ツェルトにはさまざまな使い方があり、簡単に設営ができるところが魅力です。
それでは実際に、軽量で機能性の高いおすすめのツェルトについて見ていきましょう。
最初のツェルトとして最適な製品を5つピックアップしました。
おすすめツェルト
【モンベル】ライトツェルト
モンベルのツェルトの中でもスタンダードな製品です。
軽さと機能性のバランスが良く、重量は430gと少々重めに作られていますが、難燃加工と防水性を高めるウレタンコーティングが施された素材を使用しているため安心感があります。
収容可能人数は2人までと広さもあり、もちろんかぶったりくるまったりの使用も可能です。
【ファイントラック】ピコシェルター
ファイントラックの「ピコシェルター」は、高い透湿性から結露がつきにくくなっています。
一般的なツェルトと比べると、結露が発生する量は1/12に軽減されており、ツェルト内の快適性を重視したいという方におすすめです。
さらに120gと驚くほど軽く、常に持ち歩いていてもストレスになりません。
【アライテント】ビバークツェルト ソロ
アライテントの「ビバークツェルト ソロ」は、その名の通り、1人用のパーソナルシェルターとして作られています。
使い方はベンチレーターから頭を出し、かぶって体にまとわせるだけです。テントのように設営することを考えた設計ではなく、1人の人の体を覆うことに特化しています。
105gという軽さと、350mlの缶よりも小さい収納サイズも魅力です。
【ジュウザ・フィールドギア】ライト&イージーシェルター・デラックス
「ライト&イージーシェルター・デラックス」は、335gという軽量性ながら、小さな前室がついていることが最大の特徴です。
インナードアはメッシュになっており、虫の侵入を防ぐこともできます。ツェルトは前室がついていないことが多く靴の置き場に困りますが、このツェルトなら心配はいりません。
【ナンガ】ナノテックスツエルト
ナンガのツェルトは320gという軽さと、NANO-texという技術を用いたことによる耐久性の高さ、通気性と撥水性に優れることから人気を誇っていました。
2019年11月時点では在庫切れとなっていますが、軽量で機能的なツェルトを希望している方には最適です。
事前に知っておきたい!ツェルト泊で役立つ豆知識
久しぶりに泊まりで雲取山へ。近場だったら晴れるだろうと思ったのに、夜は曇りで、星撮れず( ´△`)そして、はりきってツェルト泊にしたらシュラフを忘れ、一人ビバーク練習になってしまいました(笑) pic.twitter.com/fFgilZrAzi
— toshi (@toshi_the_hiker) May 6, 2016
ツェルトの使い方は簡単ですが、事前に準備をしておくことでより便利に使えるようになります。
そこでツェルトを使う機会が訪れる前に、ツェルト泊で役立つ豆知識を4つ解説します。
また、ツェルトの代用として使えるものもご紹介するので、緊急の場面でツェルトがないときのために参考にしてください。
豆知識
ツェルト泊であると便利な持ち物
タープ+ツェルトが雨も雪も寒さも凌げていい感じ。
西表島も海谷不動川も劔沢大滝もそのスタイル。#教えてあなたのULテント・タープ pic.twitter.com/sp18S1g2EP
— 辺境クライマーけんじり (@kenjiri) March 24, 2021
ツェルトを使うときにあると便利なものは、折りたたみ傘と細引きです。
折りたたみ傘はツェルトをかぶるときに中でさすことで、顔の周りに空間を作ることができます。
ツェルトの屋根代わりのような役目を果たすものです。細引きは登山のさまざまなシーンで活用できますが、ツェルトを木に結びつけて簡易的に使う場合に役立つので、ぜひ持っていましょう。
また、ツェルトをテント代わりとして使う予定の人は、コットなどを持参すると快適性が高まります。
水や冷気の侵入を防ぐためです。ただし、ツェルトとコットの重量を考えると、テントの方が軽量になる可能性が高くなります。
ロープの結び方を練習しておこう
いざというときにサッとツェルトを使えるように、ロープの結び方を練習しておくことをおすすめします。
オーバーハンドノット、エイトノット、クローブヒッチの3種類の結び方をマスターしておけば、ツェルトを張るときに困ることもありません。
ツェルトのたたみ方も覚えておこう
ツェルトを元通りコンパクトにたためるように、たたみ方も覚えておいたほうが良いです。
まずはベンチレーターのあたりを両手で持って、半分に折りたたみます。
ツェルトの生地を整えたらさらに縦に半分に折り、上部を顎などで抑えながら生地と生地の間にたまった空気を抜きましょう。
このときに、ツェルトの長さが袋の長さより長くなることがポイントです。
空気が抜けたら長い方を1/3の長さになるように折っていき、端から空気を抜きながら丁寧に巻いていきます。そのまま袋に入れて、袋の長さからはみ出した部分を押し込んで収納してください。
ツェルトの代用として使えるもの
ツェルトを購入せずに代用品を探しているという方には、テントのグラウンドシートやフライシートが代用として使えます。
もちろんツェルトよりも快適性は低いですが、工夫次第ではいざというときに活用可能です。
ただし、グラウンドシートはツェルトよりも重く、フライシートも同じくらいの重さです。緊急用として持ち歩くのであれば、ツェルトの方が携帯しやすいのは間違いありません。
コンパクトかつ軽量で、快適性が高いツェルトを用意することをおすすめします。
まとめ
ツェルトはさまざまな使い方ができ、ビバークのとき、目隠しが欲しいとき、タープ代わりにしたいときなど、さまざまなシーンで役立つアイテムです。
山ではどのようなことが起きるかわからないので、いざというときに備えて、ザックの中に常に携帯しておくと安心感があります。
ツェルトは登山用としてだけでなく、アウトドア用やツーリング用にもおすすめです。
常に携帯してもストレスのない重さなので、野外で活動することが多い方は、ぜひひとつ準備しておきましょう。
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