登山初心者の方の中には、ガイドブックだけを確認して登山に向かう方もいるようですが、登山をするなら地図の見方を覚えることは必須です。
目印が少ない山中では、地図の見方を知っていないと、道に迷って遭難するリスクが高まります。
そこで今回は、登山での地図の見方をわかりやすく解説します。
併せて、事前にしておくべき準備やコンパスの便利な使い方など、道迷いを防ぐ方法も確認しておきましょう。
地図の見方を覚えることは遭難リスクの回避
去年の高標山(NN-91)でYAMAP使っていて登山口分からなくなってしまい、それから再びメインはコンパスと紙地図。予備的にYAMAPは使っていますが下山後の消費カロリーを見るのが主目的😊。 pic.twitter.com/ZsEReOpszi
— JG0AWE (@JG0AWE) December 11, 2019
地図の見方を覚えることは、登山における遭難リスク・道迷いのリスクを回避することと同義。
地図の見方がわからなければ、ルートから外れたときに自分の居場所を把握することもできず、遭難に繋がります。
また、地図の見方がわからなければ正確な計画が立てられませんし、登山中に行きたい場所に行くためにも地図読みが必要です。
登山ガイドなしで山に登るなら、地図の見方をしっかりと把握しておきましょう。
登山で使う2種類の地図
登山で使う地図には、国土地理院発行の「地形図」と、昭文社発行の「山と高原地図」の2種類があります。
それぞれ特徴が違い、読み取れる情報も変わってくるので、どちらの地図の見方も覚えておくと必ず役立ちます。
2種類の地図
国土地理院発行「地形図」
国土地理院が発行している「地形図」は、別名「25,000分の1地図」とも呼ばれます。
その名の通り、25,000分の1の縮尺で描かれており、地形の詳細を見るときに便利です。
日本国内の土地であれば、どの場所に対しても必ず地形図が発行されています。
日本の地図は地形図を基本として作られているため、正確で詳細な情報が読み取れることがメリットですが、残念ながら登山用の地図ではありません。
そのため、山小屋やトイレ、危険な場所など、登山に必要な情報が確認できないことがデメリットです。
昭文社発行「山と高原地図」
昭文社から発行されている「山と高原地図」は、統計データによる統計地図と同じように主題図の一種。登山用の地図として、多くの登山者に愛用されています。
必要な情報が豊富に記載されているため、登山者が多い山であればこの地図だけで登ることも可能です。
合成紙が使用されており、水濡れに強いという点でも登山に向いています。
ただし、50,000分の1の縮尺で描かれており、地形図と比較して、細かな地形を読み取りづらいところがデメリットです。
また、地形図は日本国内の場所に対して必ず発行されていますが、「山と高原地図」では、知名度の低い山の地図は発行されていません。
小学生でもわかる!地図の見方の基本を覚えよう
登山で使う2種類の地図の見方を、それぞれ解説します。
まずは、初心者の方でも比較的簡単に読み取れる「山と高原地図」です。
地図の見方
「山と高原地図」における地図の見方のコツ
「山と高原地図」における地図の見方のコツは、次の4つの項目を確認しておくことです。
いずれも、登山のときに欠かせない情報ですが、この地図ひとつあればすべてを読み取れます。
登山ルート図とコースタイム
登山のルート図とコースタイムを把握しておくことは、登山前の準備として基本です。
地図上に赤線で登山道が描かれており、自分の居場所を把握するためにも役立ちます。
また、同時に登りと下りのコースタイムも掲載されているため、ご自身の体力と照らし合わせれば山選びにも活用できて便利です。
登山ルートの難易度
コースタイムも難易度の把握に役立ちますが、迷いやすい場所や危険箇所も地図上で示されているので、山自体の難易度を知ることができます。
「山と高原地図」ではルート図が赤の実線で描かれていますが、迷いやすい場所は点線になっています。
初心者の方は点線の少ない山を選び、ワンランク上の山に挑戦するなら点線の多い山を選ぶ…など、体感的に難易度をはかることが可能です。
山小屋・水場の情報
登山計画を立てるうえで欠かせない、山小屋と水場の情報も掲載されています。
また、駐車場やテント場、施設も書き込まれているので、登山計画を立てるときは「地形図」だけでなく「山と高原地図」も活用しましょう。
その他、見所や公共交通機関、見られる花などの情報もあるので、事前に確認しておくと登山をより一層楽しめます。
付録冊子
付録冊子は地図ではなく読み物で、知名度の高い登山コースに関する解説となっています。
この付録冊子は情報収集によって作られたものではなく、作者自らが実際に登山をした経験から綴られています。
実体験に基づいたものであるため、その山をイメージするために最適です。
「地形図」における地図の見方のコツ
「山と高原地図」よりも詳細に地形を読み取れる「地形図」では、地形そのものを確認したいときに便利です。
地図の見方は「山と高原地図」よりも少々難しくなりますが、ポイントを抑えて読み取れるようになりましょう。
等高線
等高線とは山の地形を示した線のことで、標高が同じ高さのところが線で結ばれています。
小学校や中学校の地理の授業でよく見かける、何重にも重なった曲がりくねった線のことです。
2本の等高線の間隔は、実際の地形における10mの距離となっており、等高線の間隔が狭いところは急斜面、広いところは傾斜が緩やかです。
地図記号
地図記号で必ず覚えておきたいものは、「崖」「雪渓」の2つです。
針葉樹、広葉樹、竹林などの植生記号や、荒れ地などの地図記号も覚えておけば、登山計画で山をイメージするために活用できますし、周辺の景色から自分の居場所を把握するためにも使えます。
尾根と谷
等高線の見方を習得すると、「尾根」と「谷」がわかるようになります。
地形図で確認すると、尾根は山頂に向かって膨らむような等高線になっているのに対して、谷は麓に向かって膨らむ形になっています。
地図の見方がわからない間は、等高線を見て尾根と谷をイメージすることは難しいかもしれません。
尾根と谷を意識しながら、時間をかけて地図を眺めていると、徐々に地図の見方が感覚的にわかってきます。
登山の前に…事前に地図で確認するべきこと
「地形図」と「山と高原地図」の見方の基本がわかったところで、登山前に地図を見て確認しておくべきことを解説します。
現地で初めて地図を確認するのでは遅すぎるため、事前に準備をしておくことが大切です。
地図で確認
ガイド本と地図で登山ルートを確認する
登山前には必ず登山ルートを確認しておきましょう。
ガイド本は地図の代わりとしては不十分ですが、山の状況や周辺エリアの確認のために活用します。
「山と高原地図」から所要時間や注意したい箇所を調べ、ご自身の能力に合った登山ルートを選んでください。
縮尺と距離から山をイメージしてみる
次に、縮尺と距離からどのような山なのかイメージします。
等高線の間隔や「尾根」と「谷」を意識しながら山の形状や傾斜をイメージできるようになれば、登山の内容までイメージできるようになります。
登山計画を立てる
山のイメージが固まったら、いよいよ登山計画を立てていきましょう。
登山計画を立てるときに大切なことは、体調不良やケガ、想像以上に時間がかかった場合など、さまざまなケースを想定してエスケープルートを選定しておくことです。
エスケープルートの選定は、登山ルートの距離が長くなるほど重要になります。
登山計画書の作成手順
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地図に登山ルートを書き込む
登山計画が立てられたら、実際に歩くルートを地図に書き込んでいきましょう。
「山と高原地図」を参考にしながら、「地形図」に登山ルートを書き込むといいですね。
「山と高原地図」には多くの情報が掲載されているので、純粋に地図として使うときは、「地形図」を使った方がわかりやすいです。
「磁北線」を引く
地形図は「磁北線」を引いてから使います。磁北線というのは、コンパスが北を指し示す線のことです。
地図上の北と実際の北は、地球の磁場の影響である「磁北偏差」によってずれており、さらに磁北極は常に動いています。
そのため、あらかじめ磁北線を引いておかないと、コンパスの指し示す方角と合わなくなってしまいます。
磁北線の引き方は、地域による磁北線のずれを修正するために、分度器やコンパスを使ってずれに合わせた線を書き込みます。
磁北線がずれている角度は、北海道で西に9°、関東で西に7°、沖縄で西に4°となりますが、さらに正確に引くためには、「地形図」に掲載されている磁北偏差の角度を利用します。
もし磁北線を引くのが難しければ、国土地理院の公式サイトにある地図機能を利用しましょう。
ウェブ上で地図に磁北線を引くことができるので、その地図を印刷すれば、簡単に磁北線が書き込まれた地図を使えます。
コンパスの便利な3つの使い方
地図の見方を覚えたら、次はコンパスの使い方を覚えましょう。
地図を使いこなすためにはコンパスの使い方を知っていなければいけないので、3つの使い方はぜひマスターしてください。
使い方
自分の現在地を調べる方法
自分の現在地を調べることは、尾根や山小屋など、目印になるものが2つあれば簡単です。
- 目印1に向けてコンパスの矢印を合わせる
- ダイヤルを回し、磁針をN極に合わせる
- プレートの側面を目印1に合わせて地図に置き、N極を磁北線と平行に合わせて線を引く
- 目印2に向けてコンパスの矢印を合わせる
- 2と同じように磁針をN極に合わせる
- 3と同じように線を引く
このような方法で2本の線を引いたら、交差したところが自分の現在地となります。
見えている山を地図上で見つける方法
実際に見えている山が地図上のどこにあるか調べるための方法です。
- コンパスの矢印を調べたいものに合わせる
- ダイヤルを回して磁針にN極を合わせる
- そのまま地図の上にコンパスを置き、現在地とプレートの側面を合わせる
- ダイヤル内の線を地図の磁北線に合わせる
- 現在地からプレート側面の延長線上が目的の山の方向
目標となっている山をはっきりと断定できる方法ではありません。
しかし地図上で方角がわかれば、およそ推測はつくようになります。
目的地の方角を調べる方法
地図上にある目的地への方角を、実際の登山ルート上で調べるための方法です。
- 地図の現在地と目的地の間に線を引く
- 線に沿ってプレートの側面を合わせる
- ダイヤルを回して磁針をN極に合わせる
- コンパスを胸の前に移動させたら体を回転させる
- 磁針とN極が合うようにする
- 磁針とN極が合ったときに矢印が向く方角が目的地
地図上から目的地の方角を割り出す方法は、周辺に施設などがない山の中では非常に重宝します。道迷いを防ぐためにも、必ず習得しておきましょう。
地図の見方がわからない人の道迷い防止方法
地図の見方やコンパスの使い方について解説してきましたが、地図の見方がわからない、地図読みができない、という人もやはりいます。
自信がない場合は次の4つのことを実践してみてください。
道迷い防止方法
地図読みができるように練習しておく
登山で地図の見方がわからないと危険なので、地図読みができるように練習することから始めましょう。
地図を眺めて山をイメージしたり、実際に磁北線を書き込んでみたり、さまざまな場所の地図を使って練習することで、少しずつ地図の見方に慣れることができます。
常に現在地を把握しておく
地図の見方がわかる人にも言えることですが、常に現在地を把握して、迷わないようにすることが大切です。
地図は迷ってから見るものではなく、迷わないために見るものです。
定期的に地図を見ながら進めば、現在地が把握しやすくなり、ルートミスなどの判断もすぐに可能です。
もしも現在地がわからなくなったとしても、現在地を把握できていた場所まで引き返せば道迷いのリスクは少なくなります。
尾根と谷の傾斜を判断できるようにする
地図の見方がわからない場合でも、地図から尾根と谷の傾斜は判断できるようにしてください。
傾斜がイメージできれば、周辺の景色と見比べたときに現在地を把握しやすくなります。
地図を見たときに、「尾根」か「谷」か、「急斜面」か「緩やか」か、ということがわかるようになるだけでも、道迷い予防に効果的です。
高度計を持っていく
「高度計」とは、現在地の高度を調べるための道具です。
山は標高が高くなると気圧が下がるので、その仕組みを利用すればおおよその標高を割り出せます。
地図とコンパス、高度計を組み合わせれば、より自分の居場所を明確にすることが可能です。
ただし、高度計は天候による高度の変化も示してしまうので、頼りすぎてはいけません。
地図とコンパスをメインで使い、高度計は補助的な存在と考えましょう。
まとめ
登山地図には2種類がありますが、それぞれの地図は特徴や役割が違うため、両方の地図の見方を覚えておきましょう。
地図に慣れていない方にとっては、磁北線の引き方やコンパスの使い方、登山地図の記号など難しく感じられるかもしれませんが、読めるように練習をしておくと必ず役立ちます。
見方がわからないという場合、通常の登山地図はもちろん、自衛隊の地図や世界地図の見方など、さまざまな地図を眺めてみてください。
地図を眺めることによって、地図に描かれている場所に自分がいる感覚、方向感覚なども磨かれていきます。
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