男性はもちろん、女性にとって大問題になることが「登山中のトイレはどうするか?」ということ。
山の中にあるトイレは限られており、いつでも自由に行けるわけではありません。
そしてトイレを使えたとしても、登山者として守るべきルールが存在します。
そこで今回は、登山中のトイレ問題について解説。女性がトイレをするための方法や、生理のときの対処法、山でトイレをするときのマナーなどをご紹介します。
女性登山者にとっての大問題「登山中のトイレ事情」
登山好きな女性にとって、「登山中のトイレをどうするか」ということは大問題です。
登山中のトイレを心配する女性登山者は多いですが、トイレの不安を抱えて水分補給を怠ると、脱水症状になって動けなくなってしまうリスクも。
しかし、山の中にはトイレが全くないということもあり、外で簡単に用を足せない女性にとっては深刻な問題となります。
女性が山に登るときは、なるべくトイレをしなくて済む状況を作りだすことと、トイレ対策のためのグッズを持っていくことが大切です。
登山中の「お花摘み」をしないために
「お花摘み」とは、トイレットペーパーとビニール袋を用意して、山の中の木陰などで女性が用を足すことを指す登山専門用語。
登山に慣れればお花摘みも簡単にできますが、やはり気が進まないことです。
そこで、お花摘みをしないために気をつけたい5つのポイントを見ていきましょう。
5つのポイント
入山前に必ずトイレをしておこう
山に入る前に必ずトイレを済ませておくことは、お花摘みをしないための基本的なポイントです。
特にトイレのない山に入るときは麓でトイレを済ませ、山の中では用を足さないようにしましょう。
電車利用の場合は、登山者向けの情報として最寄り駅に設置されているトイレの情報が公開されています。
水分補給は少量ずつ行おう
水分補給は大切ですが、一気にたくさんの水分を摂ると吸収されにくくなりトイレが近くなるもの。
水分摂取を行うときは、こまめに少量ずつ飲むようにすると尿意を催しにくくなります。
行動中に簡単に水を飲める「ハイドレーション」が便利です。
利尿作用がある飲み物は前日から避けよう
利尿作用のある飲み物は登山当日だけでなく、前日から避けるようにすることがおすすめ。
コーヒーや紅茶、緑茶などカフェインを含む飲み物やアルコールが該当します。
利尿作用のある飲み物は登山中の脱水症状を招く原因にもなるため、健康上の問題からも避けることが望ましいです。
カーボローディングを取り入れる方法も
登山中のお花摘みを避けるには、「カーボローディング」を取り入れるのもひとつの方法です。
カーボローディングとは、事前に体内に糖質をたっぷりと溜め込み、当日は食事を摂らないというマラソン選手が行う食事法のこと。
お腹が弱い人は、朝食を食べた後の登山中にお腹が痛くなってしまうこともあります。
行動食を摂らないことには危険が伴いますが、登山中の便意に悩まされている人はまず短時間の登山で試してみてください。
コース上のトイレ情報は必ずチェック
登山コース上にトイレがあるなら、お花摘みをせずとも用を足せます。
出発前にコース上のトイレ情報は必ずチェックし、トイレがあるところでは必ず用を足しておきましょう。
ただし、山の中のトイレでは多くの人が順番待ちをしている可能性もありますし、ルールを守る必要があることも覚えておいてください。
登山中に女性がトイレをする7つの方法
奈良県の近鉄榛原駅から霧氷バスに乗って高見山へ行ってきました。目指すはスノーハイキング☃️霧氷バスに乗ったら高見登山口までノンストップがありがたい😊停留所近くにはトイレもあります。ここで装備も整えて、いざ出発! pic.twitter.com/2I0HKR11xO
— 薮 伸太郎/西日本ハンバーガー協会会長 (@sintaro0919) January 25, 2020
お花摘みをしないためのポイントをご紹介してきましたが、女性が登山中にトイレをする方法はお花摘みだけではありません。
次の7つの方法を把握し、必要なものを準備しておけば、お花摘みよりも快適に用を足せるようにします。
快適に用を足す方法
避難小屋や山小屋のトイレを借りる
お手洗いに行こうとしたら、トイレは絶賛閉鎖中で、登山道途中の元谷避難小屋のトイレを借りに、足場に少しクセのある、行者登山道を登って行くことになりました〜😣 pic.twitter.com/NOX1VwaShS
— t-nov925 (@TnovT) April 8, 2021
避難小屋や山小屋にトイレがあれば、屋内の個室で用を足せます。
借りられるところがあればぜひとも借りたいところですが、山小屋のトイレは有料の場合がほとんどであるため、100円玉を何枚か用意しておきましょう。
ちなみに水栓ではなくバイオトイレが多くなっています。
ビニール袋と紙を持って木陰で用を足す
ビニール袋や便袋と紙を持って木陰で用を足すのは、いわゆる「お花摘み」です。
登山コース上から見えない場所に隠れてトイレをする方法ですが、野外で用を足すときのルールを守る必要もあり、女性の登山初心者の方にとってはハードルが高いと感じられるかもしれません。
携帯用トイレを用意する
携帯用トイレがあれば、トイレのついていない山小屋でも小屋内部で用を足すことができ、尿だけでなく大便の処理もできるようになるため、女性も男性も用意しておきたいものです。
用を足した後に内容物と臭いが漏れないタイプのものを選びましょう。廃棄用の袋がついていると安心です。
ポンチョで目隠しを作る
携帯用トイレを使うときやお花摘みをするとき、目隠し用のポンチョがあれば周囲の視線が気になりません。
女性で屋外でのトイレに抵抗がある人は、必ずポンチョを用意しておくことがおすすめ。
携帯用トイレの中には、ポンチョがついているものもあります。
簡易テントで目隠しを作る
ポンチョと同じく目隠し用として便利なのが、簡易テントであるツェルトです。
簡易テントは広げるのも簡単で、設営しなくても幕のようにしてすぐに目隠しが作れます。
木の枝に吊るせば全身を隠せるようになるため、木陰のない登山道でも用を足すことが容易です。
トイレ補助具を使う
女性用トイレ補助具を使えば、女性でもズボンを下ろすことなく、立ったまま尿ができるようになります。
女性登山者が屋外でのトイレに抵抗を感じるのは、ズボンを下ろしてしゃがまなければいけないから。
トイレ補助具を使えば、登山初心者の方でも比較的抵抗なく排尿できます。
おむつをしていく
登山者の中には老人用のおむつをして山に登るという人もいます。
着用している人は多くはありませんが、おむつをしていれば行動中であっても、どこでもトイレができるようになるため、不安の大きい方にはおすすめです。
袋を忘れた!山でトイレをするときのマナーとお約束
登山中に屋外でトイレをするためには、ビニール袋や携帯トイレが欠かせませんが、袋を忘れてしまう可能性もあります。
袋がない状態でどうしてもトイレを我慢できないときは、屋外でトイレをするときのルールを守ってください。
屋外でトイレをするときのルール
山では紙やナプキンを絶対に捨てない!
紙やナプキンを山に捨てることは絶対に止めましょう。
水場に流しても完全に溶けることはありませんし、繊維が入っているため分解もされにくく自然環境を汚す原因になります。
拭いた面を内側にたたんでその上から紙を巻くか、お菓子の袋などに入れて持ち帰ってください。
トイレで用を足すときのマナー
山頂の山小屋などでトイレを借りるときにもルールがあります。
山小屋のトイレは有料であることが多いと先に解説しましたが、宿泊料を支払った利用者以外は、利用料やチップを必ず支払うことが基本です。
紙をそのまま捨てられない、紙を分別する必要があるなど、山小屋によってトイレのルールはさまざま。
必ず掲示されているルールを守って使うようにしましょう。
野外で用を足すときのマナー
野外でトイレをするときには、用を足す場所、用の足し方などに気をつけましょう。
山の中ではどこでも用を足して良いわけではありません。人間にとっても、自然にとっても安全な場所で行うようにしてください。
沢や水場から十分に離れる
まず、沢や水場から20~30m程度離れた場所を選びます。
特に上流近くでトイレをすると水場全体が汚染されてしまうため避けるようにしましょう。
水が汚染されてしまうと飲めなくなってしまうこともあり、その後の登山をする人全員に対して大きな迷惑を掛けることになります。
植物や落ち葉が多く安全な場所を選ぶ
沢や水場から離れた場所の中でも、植物や落ち葉が多い場所がトイレをするために理想的な土地。
植物が生い茂っている場所であれば、雨が降っても水場の中に排泄物が流れ込む心配がありません。
そして人間の安全のために、熊が出なさそうな場所であること、滑落の危険性がないこと、霧が深くないことなど、周りの環境にも注意して場所を選んでください。
スコップで穴を掘って汚物を処理する
トイレのための良い場所が見つかったら、スコップを使って、地面に排泄物が隠せる程度の穴を掘りましょう。
用を足したら、排泄物に土をかけて埋没処理をします。
雪の上で用を足すときは地面ではなく、雪穴を掘って同じように埋没処理をすれば完了です。
登山と生理が重なったら?登山計画の変更も考えて
女性登山者にとってのトイレ問題は尿や大便だけではありません。
登山の日程と生理が重なってしまう可能性もあり、男性よりも圧倒的にトイレに関する負担が大きいもの。
もし日程が重なったら登山のキャンセルも考えるべきですが、もし強行するのであれば次のポイントに気をつけましょう。
登山と生理
いちばん大切なのは無理をしないこと
生理痛や精神的なイライラ、吐き気、眠気など、生理中の女性の体は非常に不安定です。
登山はハードな運動であるため、いちばん大切なことは無理をしないこと。
体調の問題で登山の続行が難しそうであれば、プラン変更も検討してください。
仲間にも伝えておこう
一緒に山登りをする仲間がいるのであれば、生理中であることを仲間にも伝えておくことが大切です。
相手が男性であれば伝えにくいかもしれませんが、少なくとも「体調が良くない」ということは伝え、もしものときのプラン変更に対応してもらえる状態にしておきます。
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鎮痛剤や冷え予防アイテムを持っていく
生理痛がひどい女性であれば、鎮痛剤や冷え予防アイテムを忘れずに。
登山中に生理になってしまうことも考えられるため、鎮痛剤は常にザックの中に携帯しておくと良いでしょう。
山は気温が低く冷えやすいので、痛みが悪化しないようにしっかりと冷えを予防してください。
ニオイ対策にはハッカスプレーが効果的
生理中における経血のニオイ対策には、ハッカスプレーが役立ちます。
あらかじめ下着にスプレーしても良いですし、トイレに行ったときにズボンにスプレーしてもニオイ軽減に効果的。
ハッカスプレーや汗のニオイ対策や虫よけにも使えるので、鎮痛剤と同じように、常にザックの中に忍ばせておくと必ず活躍してくれるアイテムです。
まとめ
女性登山者にとって「トイレ」は大問題となりますが、女性一人での登山でも、アウトドア用のトイレグッズを活用すれば心配は軽減されるはずです。
携帯トイレやポンチョ、トイレ補助具など、便利なアイテムはたくさん販売されています。
不安をなくして登山を思いっきり楽しめるように、ご自身に合ったアイテムを選んでください。
最近、エベレストではトイレから運んだ排泄物をガスに変え、肥料として活用する技術が開発されています。
このような技術が日本でも広まっていけば、女性も男性も、トイレの心配をすることなく登山を楽しめる日が訪れるかもしれません。
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