長時間に渡る登山でバテないためには、トレーニングで筋力と持久力をつけることが欠かせません。
とくに持久力がないと、せっかくの美しい景色を見る余裕もなくなり、山を楽しめなくなってしまいます。
特に登山初心者の方は、山登りのために筋トレと体力作りを行うことはとても大切。
今回は登山に向けてのトレーニング法を幅広くご紹介するので、トレーニング方法を知りたいという方はぜひ参考にしてください。
登山のトレーニング効果を高めるための3つのコツ
登山のトレーニング方法を確認する前に、まずは、トレーニング効果を高めるための3つコツについて見ていきましょう。
せっかくトレーニングをするのであれば、最大限の効果を得たいもの。
そのためには次の3つのポイントに注意しながら行ってください。
効果を高めるコツ
有酸素運動と無酸素運動の違いを知る
トレーニング効果を引き出すために欠かせないことは、有酸素運動と無酸素運動の違いを知って適切に鍛えること。
それぞれ特徴が異なるため、自分の求める効果を得られるのはどちらかを把握しておく必要があります。
有酸素運動
運動強度と筋肉への負荷が低く、筋肉を動かすときに酸素が使われる軽めの運動。
糖質や脂質をエネルギー源とし、比較的長時間行えることから、筋力強化よりも脂肪燃焼や持久力向上に効果的です。
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが有酸素運動に該当します。
無酸素運動
一時的に筋肉にかかる負荷が大きく、筋肉を動かすときに酸素を使わない強度の高い運動。
運動強度の高さから筋肉の疲労が激しく、長時間行うことが難しいため、持久力向上や脂肪燃焼効果よりも筋力強化の効果が高くなります。
負荷の大きい筋トレや短距離走が無酸素運動です。
筋力と持久力のバランスを考える
登山のための体作りでは、筋力と持久力のバランスを考えたトレーニングが大切です。
前の項目で解説したように、有酸素運動と無酸素運動ではそれぞれ鍛える部分が異なります。
さらに、重りを使ったトレーニングであれば、行う回数を増やせば持久力が高まり、重りの重量を重くすれば筋力が高まることに。
筋力と持久力の両方を高めたいのであれば、運動のバランスを考えて行っていくようにしましょう。
腹筋と背筋の両方を鍛える
登山をしていると背筋が鍛えられますが、腹筋と背筋のバランスが取れていないと腰痛の原因になります。
腹筋と背筋が、体の前後で背骨を支えて姿勢を維持しているためです。
登山をすることで自然と鍛えられる背筋に引っ張られないように、意識的に腹筋も鍛えるようにしてください。
屋外運動で持久力を高める
トレーニング効果を高めるためのコツを覚えたところで、実際に登山のための体作りに役立つトレーニングをご紹介していきます。
まずは屋外で行える、持久力を高めるための運動です。
比較的運動強度が低く、どなたでも簡単に始められるものをピックアップしました。
ピックアップ
重りをつけてウォーキング
基本の有酸素運動であるウォーキングは、平地では負荷が低くなりすぎるため重りをつけると効果的です。
足首に装着するタイプの重りをつけてウォーキングをすれば、心肺機能、持久力とともに脚力強化も行えます。
荷物を入れたリュックを背負って行っても良いでしょう。
ジョギング
ジョギングはウォーキングよりも運動強度が高く、心肺機能と脚力の強化に役立つ運動。
スピードが6.4km/h以下となり、会話をしながら走れる程度の運動がジョギングに該当します。
コンクリートの上を走ると脚への負担が大きくなること、山の地面は土であることから、路面よりも公園やグランドなどの土の上を走る方がおすすめです。
ランニング
ランニングはジョギングよりもさらに強度が高まった運動で、6.4km/h以上のスピードで走り、マラソン同様に息切れがする程度が目安となります。
ウォーキングやジョギングと同様、心肺機能、持久力、脚力の強化に効果的です。
登山のときに近いイメージで取り組むために、1時間に1回、休憩を挟むようにしましょう。
階段の上り下り・踏み台昇降
登山では傾斜のある地面を歩くことになるため、階段の上り下りも理想的なトレーニングとされています。
上り下りする段数を決めたら、何回も往復することで持久力と脚力の強化が可能です。階段を1段飛ばし、2段飛ばしで上り下りするとさらに効果的。
ただし、膝への負担も大きくなるので体の様子を見ながら行ってください。踏み台昇降でも同じ効果が得られます。
縄跳び
縄跳びは持久力を高めてくれるだけでなく、足腰全体を鍛えるトレーニングとしておすすめです。
1秒間で1回転を目安とし、5分間行い、1分間の休憩で1セットと考え、6セット程度行うと良いでしょう。
場所があれば屋内でもできる運動で、縄跳び以外に特別な器具も必要ないため手軽に挑戦できます。
自転車
自転車でのサイクリングは持久力アップと脚力強化に効果的ですが、ジョギングやランニングよりも膝への負担が少なくなります。
ただしその分脚への負荷も少なくなるため、坂道を長時間走るようにしましょう。
サイクリングは登山時の登りのトレーニングとしておすすめですが、下り時のトレーニングは行なえません。
ジムや自宅で行う上半身の筋力を鍛える
持久力を高めるトレーニングの次は、ジムや自宅などの屋内で行う筋トレをご紹介します。
登山トレーニングといえば下半身を鍛えることだと考えがちですが、重いザックを背負って山を登りきるためには、上半身のトレーニングも重要です。
上半身の筋力を鍛える
【体幹】腹式呼吸エクササイズ
体幹は上半身を支えるために必要な筋肉です。足元の悪い道や下りのときに上手にバランスを取るためには、体幹が鍛えられていることが大切。
腰痛や坐骨神経痛予防にもおすすめの自宅で簡単にできる運動です。
- 仰向けになり両膝を立て、両手をお腹の上に置く
- 鼻から息を吸いながらお腹をふくらませる
- 口から息を吐きながらお腹をへこませる
- 1~3を3セット繰り返す
【肩・腕・背中】チンニング
チンニングは背中の「広背筋」、肩の「僧帽筋」、二の腕の「上腕三頭筋」を鍛える懸垂運動です。
懸垂ができる場所が必要となるため、主にジムで取り組むことになるでしょう。
- 肩幅よりも広い幅でグリップを握る
- 脇を締めながら胸をバーに近づけるように体を持ち上げる
- 時間をかけて体をゆっくりと下ろす
- 1~3を10回行い、30秒間休む
- 4を3セット繰り返す
【胸・腕・腹】腕立て伏せ
腕立て伏せで鍛えられるのは、肩の「三角筋」、腕の「上腕三頭筋」、胸の「大胸筋」など。
登山のときは上半身の筋肉を使って岩をよじ登ることもありますが、筋力が弱いとザックによる負担に耐えきれなくなることもあるのでしっかりと鍛えておいてください。
- 床に両手とつま先をつけて膝を持ち上げる
- 背中が反らないようにしながら両肘を直角まで曲げる
- 両肘を伸ばして元の姿勢に戻る
- 2~3を10回で1セットとし、2セット、繰り返す
室内メニューで下半身の筋力を鍛える
登山で最も重要となるのが下半身の筋肉です。腰から太もも、お尻、ふくらはぎにかけての筋肉をしっかりと鍛えることで、山道に負けない体力を手に入れることができます。
3つのトレーニングでしっかりと鍛えましょう。
下半身の筋力を鍛える
【太もも・おしり】スクワット
登山の筋力トレーニングの基本であるスクワットは、太ももの「ハムストリング」とお尻の「臀筋」、腰の「腸腰筋」を鍛える筋トレ。
背筋を伸ばした状態で行うことがポイントです。
- 足を肩幅に開きつま先を外側に向ける
- 息を吸いながらゆっくりと両膝を曲げる
- 両膝がつま先よりも前に出ないようにお尻を後方に出す
- 太ももが床と平行になったら数秒間キープ
- ゆっくりと元の姿勢に戻す
- 2~5を30回行い、30秒間休む
- 6を3セット繰り返す
【ふくらはぎ】片足スクワット
片足で行うスクワットは、登山で酷使されるふくらはぎを効率的に鍛えるために理想的な筋トレ。
手をつける支えさえあれば、どこでも簡単に取り組めます。
- 壁の横に真っ直ぐ立ち、右手を壁につく
- 右脚を折り曲げて片足立ちになる
- 左膝がつま先より前に出ないように曲げながらお尻を後方に出す
- ゆっくりと左膝を伸ばして元の姿勢に戻る
- 1~4を15回行ったら反対側も同様に行う
- 5を3セット繰り返す
【腸腰筋】クライムビクス
「腸腰筋」は腰にあり、登山でメインの動きとなる「脚を上げる」ための筋肉です。
広い場所を必要としないため室内でも行いやすく、ゆっくりとした動きなので体に過度な負担をかけることもありません。
- 腰に両手を当てて真っ直ぐに立つ
- 2秒間かけて右膝を腰の高さまで上げ、2秒間かけて下ろす
- 左脚も2と同様に行う
- 2~3を10回繰り返す
ヨガのポーズでバランス感覚を向上
登山で転倒しないためにはバランス感覚を鍛える必要がありますが、そのために役立つのがヨガのポーズ。
バランス力を高めるために効果的な3つのポーズをご紹介するので、就寝前や起床時など、タイミングを決めて毎日継続して行ってください。
役立つヨガのポーズ
木のポーズ
バランス感覚を鍛えるポーズとして最も基本的なものが木のポーズです。
上げる方の足をなるべく上の方に付けるようにして行いましょう。
- 筋を伸ばして両手は頭の上で合掌する
- 右足の裏を左太ももの付け根につけて片足立ち
- 視線を一箇所に集中させて30秒間キープ
- 反対側も同様に行う
ハイランジ
ハイランジはバランス感覚を高めながら、太ももと背中の筋肉も同時に鍛えられることがメリット。
後ろに伸ばした脚はつま先立ちにして、膝を伸ばしながら行ってください。
- 背筋を伸ばして立ち右脚を前に出す
- 右の膝を直角に曲げて両手を高く上に伸ばす
- 左脚は後ろに伸ばしてつま先立ち
- 10秒間、3呼吸分キープ
- 反対側も同様に行う
ダイアゴナルクロス
バランス感覚と体幹を同時に鍛えられるヨガのポーズです。
最初は10秒間のキープから始め、慣れてきたら30秒間に伸ばしましょう。
- 両膝と両手を床につく
- 左の手のひらを内側に向け、腕を耳の高さで前方に伸ばす
- 右脚を後方に伸ばして足首を直角に保つ
- 目線を下に向けたまま10秒間キープ
- 反対側も同様に行い、左右各2回ずつ行う
登山トレーニングを行う前に知っておきたい基礎知識
登山のためのトレーニング法を鍛えられる部位ごとにご紹介しましたが、筋トレを行う前に次の4つの基礎知識を知っておいてください。
これらの知識を持っていると、さらに効率的な体作りが可能となります。
小見出し
トレーニング前にはストレッチをしよう
トレーニングを行う前にはストレッチをして、筋肉の柔軟性を高めておくと怪我の心配がありません。
もちろんストレッチにはトレーニングのときだけでなく、実際の登山での怪我も予防してくれる効果も期待できます。
呼吸をしながら、痛くない程度に筋肉を伸ばし、一箇所につき20~30秒間かけて行ってください。
プロ登山家によるトレーニング本を参考にしよう
「登山の運動生理学とトレーニング学」という本は、登山家から高い人気を誇るトレーニング本です。
著者は運動生理学とトレーニング学を専門とする鹿屋体育大学教授であり、プロ登山家でもある山本正嘉氏。
初心者でもわかりやすい説明がされているので、まだ読んでいない人は登山トレーニングの解説書として目を通してみましょう。
持久力は心拍数を目安にしよう
疲れないペースで登山をするためには、自分の体力を把握しておくことが大切ですが、それは心拍数を目安にして知ることができます。
手首で15秒間脈を計り、その数値に4を掛けたものが1分間の心拍数となります。
そして、運動時の目安となる心拍数は次の計算式から算出してください。
運動時の目標心拍数=(208-(年齢×0.7))×0.75
例えば40歳の人であれば135です。しかし心拍数には個人差があるため、安静時の心拍数(脈拍数)が低めの人であれば、目標心拍数も少し低めで考えたほうが疲れにくいと考えられます。
トレーニング時も脈拍数を目安にしながら、無理のないペースで行うことがおすすめです。
登山トレーニングの後はプロテインを飲もう
筋トレをして30分以内にプロテインを摂取すると、筋力と筋肉量アップに効果的だと言われています。
効率的に筋力を高めたいという場合は、登山トレーニングをした後の30分以内にプロテインを摂取すれば、より早く筋肉を強化することが可能です。
またプロテインを飲みやすくするブレンダーボトルは試す価値はあります。
まとめ
登山でバテない体作りをするためには、必要な筋肉を鍛えるためのトレーニングが大切です。
今回ご紹介したトレーニング方法を実践しながら、日常生活の中で階段を使うなど、日頃から積極的に体力作りをしていくことが効率的に鍛えるためのコツです。
トレーニングの基本的な知識を身につけたら、毎日少しずつでも良いので運動をするようにしていきましょう。
いつも登山中に息切れしてしまうという人でも、きっと次の山登りでその効果が実感できるはずです。
ただし、登山翌日など体が疲弊している期間は無理せず、しっかり休むことも忘れないでください。
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