登山・山歩き

トレッキングポールの使い方は?使う場所で効果が違う?登山を快適にする膝負担の減らし方

登山中に使う杖のような装備を「トレッキングポール」「登山ストック」と言います。

トレッキングポールを使っている人は実に多いですが、正しい使い方をご存知でしょうか?

そこでこちらの記事では、正しいトレッキングポールの使い方や注意点を詳しくご紹介します。

これから使ってみたいと思っている方、使っているが正しい使い方がわからないという方、どちらの方にも役立つ内容です。

トレッキングポールとは?特徴と機能について

「トレッキングポール」とは登山のときに使う杖のことです。

長時間に渡る登山で脚ばかりに負担をかけると、筋肉が疲弊しきってしまいます。

トレッキングポールを上手に使いこなせれば、今までよりも登山が格段に楽になるでしょう。

トレッキングポールとは

登山での推進力を高め疲労を軽減

山に登るときは、トレッキングポールを使うことで「推進力」が高まり、脚の筋肉や関節にかかる負担を減らしてくれます。

「推進力」とは前に進むための力のことです。脚だけでなく腕の力を利用することで、より少ない負荷で山に登れるようになります。

下りでのバランス力を高め怪我を防ぐ

山を下るときに使えば、「推進力」ではなく「バランス力」を高めるために効果的です。

下りでは体のバランスを崩しやすいですが、トレッキングポールで体を支えることによってバランスが取りやすくなります。そのため、転倒予防に効果的です。

ウォーキングにも活用できる

トレッキングポールは登山だけでなく、ウォーキングにも活用可能です。

両手にトレッキングポールを持つと自然と姿勢が良くなり、正しいウォーキングができるようになります。

遠くにトレッキングポールを突くようにすれば、脂肪燃焼効果が高まると言われており、ダイエット効果も期待できるでしょう。

トレッキングポールには2つの種類がある

トレッキングポールは、グリップの形状によって2つの種類にわけられます。

種類によって持ち方や効果的な使い方が変わるため、目的にあった方を選ぶようにしてください。

スタンダードな「I字型トレッキングポール」

「I字型トレッキングポール」は、グリップが真っ直ぐになっているタイプです。

最近の登山では、両手にそれぞれ1本ずつI字型トレッキングポールを持つスタイルが主流となっています。

登り時の推進力を高めたい方におすすめです。

1本で使える「T字型トレッキングポール」

「T字型トレッキングポール」は、グリップが「T」の形になっているタイプです。

年配の方が持つ杖を想像するとわかりやすいでしょう。

片手で1本だけ持って使うことが多く、下山時のバランス力を高めるために効果的です。

トレッキングポールの正しい使い方をマスターしよう

トレッキングポールの効果を最大限に得るためには、正しい使い方をマスターすることが欠かせません。

事前準備から持ち方、歩き方まで、正しく使うための方法を解説します。

トレッキングポールの使い方

まずは長さを調整

実際にトレッキングポールを使う前に、長さを調整しましょう。

基本的な長さの調整法をご紹介しますが、基本的な長さで使ってみて違和感を抱いたら、ご自身が使いやすいように微調整してください。

平地

基本となる平地では、トレッキングポールを持ったときに肘が直角になる長さが目安です。

中段と下段を同じ比率で伸縮させて調整しましょう。

登るとき

山に登るときは、平地よりも短めに調整します。平地に立ってトレッキングポールを持ったときに、手が腰の位置にくる長さが目安です。

下るとき

山を下るときは、平地よりも長めに調整します。平地に立ったときにトレッキングポールを持つ手が胸のあたりにくる長さを目安としてください。

長さを固定するときの方法

長さを固定する方法はトレッキングポールによって異なります。「レバーロック式」「スクリュー式」「ラチェット式」の3種類の固定方法があるため、どの方法で固定するタイプなのか知っておくことが大切です。

レバーロック式

レバーロック式では接合部にレバーがついているので、レバーを緩めて調整し、ちょうど良い長さになったらレバーを閉めて固定します。先端の方から順番に調整しましょう。

スクリュー式

スクリュー式ではシャフトの部分を回して固定します。

シャフトを伸ばして、「ストップ」と書かれた部分が隠れるところで右回りに回転させ固定してください。こちらも先端の方から順番に固定していきます。

ラチェット式

ラチェット式ではシャフトの穴にラチェットボタンを留めて固定します。伸ばすと穴にボタンがカチッとはまるので、順番にボタンを留めていきましょう。

ラチェット式は根本の方から伸ばして調整していきます。

グリップは正しく持つ

トレッキングポールを効果的に使うためには、グリップを正しく持つことがポイントです。

I字型とT字型では持ち方が変わるので、それぞれの持ち方を覚えて効果を最大限に発揮させてください。

I字型

グリップが真っ直ぐになっているI字型トレッキングポールは、まずストラップに手首を通して補助力を高めます。

そして、登山時にはそのまま横からグリップをつかみ、下山時には先端を握るようにして上からつかむのが正しい持ち方です。

T字型

グリップがT字状になっているT字型トレッキングポールは、グリップの短い方が親指側にくるように持ちます。

親指と人差し指で短い方を握り、残りの指で長い方を握るようにしましょう。登山時も下山時も持ち方は同じです。

ストラップを活用する

ストラップを手首に通すことで、弱い握力でトレッキングポールを握れるようになります。

常に握力を使い続けていると疲れてしまうので、ストラップを活用して手にかかる負担を軽減させることが大切です。

ストラップはトレッキングポールの落下防止にも役立ちます。

動画を見て歩き方を覚える

登山でトレッキングポールを利用するなら、疲れにくい歩き方を覚えるようにしてください。

こちらでは文字で解説しますが、動画を見ればイメージしやすくなります。公開されている動画を見て、練習してから実践に挑むことをおすすめします。

平地

平地ではトレッキングポールを前に出してから、反対側の足を前に出します。地面に突いたら、広めの歩幅で体を前に押し出すようにして力を入れ、次に反対側のトレッキングポールを前に出して繰り返します。突く位置は前に出す足のかかとあたりです。

階段

登山道には急な階段が多いですが、下りるときは2~3段下の段差に両方のトレッキングポールを突いてから、1段ずつ下りるようにしましょう。

階段を上るときも2~3段上に両方のトレッキングポールを突き、体を支えながら上るようにします。

登るとき

山に上るときは上半身を真っ直ぐに保ち、前に軽く方向け、足を前に出すタイミングで反対側のトレッキングポールを突くようにします。

そして、腕に力を入れすぎないように、軽く握りながら体を前に押し出します。

下るとき

山を下るときも上半身を真っ直ぐに保ちます。足を前に出して、反対側のトレッキングポールをつま先から約20cm先に突いたら足を着地させてください。

足をトレッキングポールを同時に前に振り出し、先にトレッキングポールを着地させ、その直後に足を着地させるイメージです。

トレッキングポールを使うときの注意点

トレッキングポールを使うときの注意点は4つです。

使うべきシーンを見極めないと、反対に疲れやすくなってしまったり、山の自然を壊してしまったりする可能性もあります。

注意点を守り、正しく使うようにしてください。

使うときの注意点

脚の内側に入らないようにする

トレッキングポールが脚の内側に入ってしまうと、脚に絡まって転倒につながります。

トレッキングポールは体の横にくるように持ち、内向きにならないように真っ直ぐ前に突くことがポイントです。

両手にストックを持っている状態で転倒すると、手を突けない可能性があり危険性が高まります。

トレッキングポールに頼りすぎない

トレッキングポールに頼りすぎると、腕への負担が大きくなりすぎて、脚よりも先に腕が疲れてしまいます。

あくまでも補助であることを忘れずに、トレッキングポールの力だけで登らないように注意してください。

トレッキングポールが必要な場面を見極める

トレッキングポールを使わないほうが安全性が高くなる場合もあるため、使うべきシーンを見極めて使いましょう。

たとえば、岩場では両手両足を使って登る「三点確保」が必要となる場合も多く、使わないほうが安全性が高まります。

急な坂道も転倒したときに両手が塞がっていると危険なので、使わないほうが無難です。

先端のキャップやバスケットは状況に応じて使い分ける

先端についている「キャップ」や「バスケット」は状況に応じて付け外しして使い分けてください。

通常の登山道であれば、植物や木道などを傷つけないようにキャップを付けます。

ただし、濡れた岩場、凍結道路などでは滑るため、キャップを外して使うのが基本です。

バスケットが必要となる場面は雪道です。雪の積もった道ではバスケットが雪をつかんでくれるため、非常に歩きやすくなります。

バスケットを使うときはキャップを外しましょう。

登山初心者におすすめ!人気のトレッキングポール

それでは、登山初心者の方におすすめできる、登山者から人気のトレッキングポールをご紹介していきます。

2つの商品をピックアップしましたが、どちらもも軽量で使いやすく、コスパに優れたトレッキングポールです。

人気のトレッキングポール

モンベル 2wayグリップカーボンポール アンチショック

モンベルの「2wayグリップカーボンポール アンチショック」は、I字型としても、T字型としても使えることが最大の特徴です。T字型グリップの下に、I字型グリップが備わっています。

シャフトに使用されているのは、軽量で強度に富む「超々ジュラルミン」と「カーボン繊維強化樹脂」です。

先端には耐摩耗性のあるタングステンカーバイトを採用しており、長く愛用できる仕上がりになっています。固定方法はスクリュー式です。

leki ULイーグル

レキの「ULイーグル」はシンプルなつくりと、リーズナブルな価格設定が魅力です。

アルミ製でグリップはI字型のみとなっています。最短の長さは58cmと非常にコンパクトです。

初心者でも使いやすいように機能が控えめなトレッキングポールですが、スーパーロックシステムによって長さ調整がスピーディーに行なえます。

ロックのパワーの強いので、トレッキングポールを使い慣れていない人でも安心です。

トレッキングポールの選び方

初心者におすすめのトラッキングポールを2つご紹介しましたが、自分にあった製品の選び方は、身長から「長さ」を算出することがポイント。

そこでここからは、身長と長さからトレッキングポールの選び方を解説していきます。

トレッキングポールの選び方

トレッキングポールの長さを選ぶ基準

トレッキングポールは製品ごとに長さが変わりますが、ご自身にとって最適なモデルを選ぶには用途に応じて、次のような計算式で身長から適切な長さを求めましょう。

ウォーキングポール・登山用トレッキングポールとして使う場合

身長(cm) × 0.63

ノルディックウォーキングのように使う場合

身長(cm) × 0.68

ノルディックウォーキングのように使う場合は、推進力を得る使い方がメインになるので、体を前方に押し出しやすいよう長めの方が使いやすいです。

一方、登山用トレッキングポールとして使うなら少し短めの長さがおすすめ。

トレッキングポールは長さを調整できるので、「身長×0.63~0.68」に対応した製品を選べば最適な長さで両方の用途に使えます。

長さの基準はおへそを目安にしてもOK

身長から長さを算出すればご自身に最適なトレッキングポールを選べますが、「おへその位置」を目安にする選び方もあります。

トレッキングポールを握り、握っている手の中指をおへその前に持ってきてください。おへそと中指の位置をあわせたとき、トレッキングポールの先が地面に接していれば適切な長さです。

実際に登山に行って、トレッキングポールの長さをあわせるときに役立つのがおへその位置であわせる方法。

製品を選ぶときは身長から長さを算出する方法で選べますが、いちいちメジャーなどで長さを測って調整するのは手間がかかります。

「グリップを握った中指がおへその前にくる長さが適切」と覚えていれば、使用時の長さ調整がスムーズです。

トレッキングポールの長さで運動負荷が変わる

トレッキングポールはご自身にとって適切な長さに調整することが大切ですが、微調整すれば運動負荷を変えることも可能です。

トレッキングポールの長さによる運動負荷は短い方が軽くなります。登山での疲労を少しでも減らしたい場合は少し短めにし、トレーニング目的なら少し長めにする…など、ご自身の目的にあわせて調整してみましょう。

もちろん、あまりに極端に長すぎたり短すぎたりすると身体に負担をかけたり、反対に運動効果が得られにくくなったりしますが、身長に0.63~0.68を乗じた範囲内であれば問題ありません。

身長を目安にしながら、使い勝手と運動負荷の両方を考慮しながらトレッキングポールの長さを変えて使用してください。

知っておきたい!トレッキングポールの基礎知識

トレッキングポールを初めて使うという方のために、トレッキングポールの基礎知識について解説します。

いずれも知っておいて損はない知識ですので、しっかりと覚えて、快適にトレッキングポールを活用しましょう。

小見出し

組み立て方

長さ調整を行うだけの伸縮式トレッキングポールであれば組み立てなくても良いですが、「折りたたみ式」の場合は長さ調整の前に組み立てが必要です。

折りたたみ式はヌンチャクのような形状になっているので、ケーブルでつながっている部分のシャフト同士を差し込んで組み立てます。

グリップを持って、シャフトが一直線になるように根本部分前方に引っ張れば簡単に組み立てが可能です。

リュックへの固定の仕方

トレッキングポールを使わないときに、リュックやザックに固定する方法を覚えておくと便利です。

もちろん、ザックの中に入ればそのまま入れてしまえば良いのですが、入らない場合はザックの下についている輪に通すようにし、グリップをザックにクリップなどで固定します。

ストックがザックの上下からはみ出さず、落ちないようにすることがポイントです。

メンテナンス方法

トレッキングポールを使った後は、メンテナンスをして綺麗な状態を保ちましょう。

まずはシャフトを全て抜き取って分解し、先端についているキャップも取ります。そして、グリップ・シャフト・キャップを乾いた布で拭いて汚れを落とします。

その後、元通りに組み立てて保管しますが、レバーロック式の場合はファストロックを開けたまま保管した方が長持ちします。

まとめ

登山時の推進力を高め、下山時のバランス力をアップさせるトレッキングポールは、上手に活用すれば体への負担を大きく軽減してくれるすぐれものです。

もちろん登山用だけでなく、使い方を覚えれば平地やウォーキングで使っても効果的なので、さまざまなアウトドアの場面で活躍してくれます。

ただし、トレッキングポールの効果を十分に得るためには、正しい使い方を覚え、状況に応じてキャップやバスケットを使い分けることが大切です。

基本的な使い方がわかったら、登山前に長さのチェックや練習などをしてから実践で活用しましょう。

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