登山計画を立てることは、安全に登山をするために欠かせません。
警察本部地域課に登山計画書を提出しておけば、もしも山岳遭難事故が起きたとしても、いち早く救助してもらえます。
長野県警山岳遭難救助隊長によると、平成29年の山岳遭難発生数は過去最悪。令和2年2月の最新情報を確認すると、ほぼ毎日事故遭難が発生しています。
今回の記事を参考にしながら登山計画を立て、安全な登山を目指しましょう。
登山計画書って必要?提出することの3つのメリット
登山経験がある方の中にも、登山計画書を作成したことがないという方は意外と多いもの。
しかし登山計画書を作成し、警察本部に提出することには大きな3つのメリットが存在します。
登山計画書のメリット
遭難したときの救助がスピーディー
登山計画書を提出しておけば、遭難した場合の山岳救助隊による救助活動がいち早く行われる可能性が高まります。
計画を確認することで行方不明者や遭難者の場所をいち早く特定できるようになり、結果的に命をなくすという登山最大のリスクを回避することにつながるためです。
緊急時に適切な行動が取れる
登山計画を作成する際に、緊急下山ルート・エスケープルートなどを確認することになります。
事前に緊急時のルートを把握できるということは、緊急時に適切な行動が取れるようになるということ。
いざというときに慌てず、冷静な行動を取るためには計画を建てることが大切です。
道迷い・遭難事故・忘れ物のリスク軽減
登山計画書の作成は救助のスピードを高めるだけでなく、山岳遭難防止にも効果的。
登山コースをイメージすることで道迷いと遭難のリスクが軽減するだけでなく、携行品リストを作成することによって忘れ物をすることも少なくなり、準備万端で山に登れるようになります。
登山計画の立て方~提出までを徹底解説!
作成することで大きなメリットを得られる登山計画。
作成から提出までの流れは非常に簡単であるため、これからご紹介する内容を参考にしながら作成し、提出してみてください。
登山計画
まずは登山計画を立てよう
登山計画書作成の第一歩は登山計画を立てることです。
登りたい山を決めたら、山の情報を収集したルートを確認し、山登りのスケジュールを組み立てていきましょう。
登る山の情報を収集する
まずは登りたい山の情報を収集します。インターネットやガイドブックを参考にしながら、登山コースをプランニング。
コースにより難易度も異なるため、ご自身の登山経験値に適したコースを選びます。
地図で登山ルートを確認・選択する
挑戦するコースの目処がついたら、対象のコースが掲載されている「山と高原地図」を購入します。
「山尾と高原地図」を見ながら、コースの詳細な情報とともに、水場・分岐点・休憩所などを確認しましょう。
登山時刻・下山時刻を算出する
「山と高原地図」にはコースごとのおおよその所要時間が掲載されているので、参考にしながら入山予定時刻と下山予定時刻を算出します。
登山日程を決める
登山時刻と下山時刻を算出したら、天気予報を見ながら入山予定日と下山予定日を決めていきましょう。
なるべく晴天の日を選ぶべきなのは当然ですが、山によっては季節により難易度が変わることもあるため、山岳関連情報をなるべく多く集めておくことは欠かせません。
登山計画書を作成しよう
登山計画を立て終わったら、計画した内容を「登山計画書」として作成していきます。
登山計画書の様式やフォーマットは決まっておらず、自分で必要だと思った情報を記載していくことになりますが、最低限必要な項目は次のとおりです。
登山に参加するメンバーの情報
まずは登山に参加するメンバーの氏名や年齢、生年月日、性別などの個人情報から、住所、電話番号、家族などにつながる緊急連絡先、着用する登山ウェアの色などを記入します。
また、メンバーが山岳部に所属している場合は、団体名も記入しましょう。
登山日程や登山コース
登山する日程と辿るコースについての情報です。
日付、入山・下山予定時刻、経由地到達予定時刻など時刻の情報に加え、入山・下山予定地、経由地、エスケープルートなどの行程に関する情報も記載します。
携行品・食料の内容
山に持っていく登山道具、装備品、食料に関する情報も併せて記載しておきましょう。
テントやツェルト、燃料、通信機器の有無、持っていく食料の量などは、万が一の遭難時に役立つ情報となります。
登山計画書を提出しよう
登山計画書の作成が終わったら、次は提出するステップです。
作成した計画書は2部コピーをして、警察署提出用・家族用・自分用とします。
登山計画書の提出方法は3つ
登山計画書を提出するための方法は、次の3つです。
- 登山口のポストに投函し郵送で提出する
- インターネットやアプリで提出する
- FAX、メールで提出する
山の麓には登山届提出用のポストが用意されていることもあり、山に行くついでに提出することもできます。
ただしポストが用意されていない場合もあるため、事前に他の方法で提出しておけば安心です。
FAXやメールでの提出も可能ですが、ヤマケイオンラインやスマートフォンアプリなどを使った手軽な提出方法もあり、好みの方法で提出できます。
提出先は各都道府県ごとの「警察本部地域課」です。
家族や知人にも登山計画書を渡す
登山計画書は家族や知人にも渡しておくことを忘れないでください。
事故が起きた際に最初に気づいてくれるのは、家族や親しい知人です。
下山予定時刻を過ぎても下山済みの連絡がない場合に、捜索願を出してもらうためには事前のお知らせが必要となります。
自分自身も持っていくことを忘れず
最初に解説したように、登山計画は緊急時の対応のためにも役立ちます。そのため自分自身も、登山のときに持っていくことを忘れないようにしてください。
緊急のときは立てた計画の内容を忘れてしまいがちですが、計画書を持っていれば見返すことができ冷静な対応が可能となります。
登山計画変更・下山時は報告する
登山計画書を提出したらそれで終わりではありません。
無事に下山したときはもちろん、計画が変更になった場合は必ず連絡をし、警察への誤連絡を防ぐようにしましょう。
登山計画を変更したときは連絡しよう
登山中に計画が変更になった場合は、登山計画書を渡した家族や知人に必ず連絡をするようにしてください。
警察への誤連絡を防ぐためであり、もし変更の連絡をしなければ、山岳遭難救助隊を出動させてしまうことになるためです。
無事に下山したら家族や知人に報告を
警察への下山届提出は義務ではありませんが、計画通りに無事に下山したら、家族や知人に「下山済み」の連絡をすることを忘れずに。
登山計画変更のときと同じように、警察への誤連絡を防ぐためでもありますし、親しい人を安心させてあげるためでもあります。
簡単に登山計画を立てるための方法
登山計画書の書き方から提出について解説してきましたが、「手書きよりもっと簡単に登山計画を立てたい!」と思う方もいると思います。
そこで、インターネットを利用してより簡単に登山計画を立てるための方法についてご紹介します。
簡単に登山計画
コンパスアプリを使う
「山と自然ネットワーク コンパス」というアプリは、登山計画の作成・提出・山岳情報の参照がすべて行えるアプリです。
山域を問わず全国の山への登山届を提出することができ、ナビゲーション機能も搭載されているため登山中も大活躍。
使いにくいとの評判もありますが、山登りに欠かせない情報を携帯電話にお知らせメールとして配信する、位置情報を家族に通知メールで送信できるなど便利な機能が揃っており、登山者必携の高機能アプリと言えます。
ヤマケイオンラインの会員になる
「ヤマケイオンライン」という登山情報サイトでは、マイページに「登山計画機能」が搭載されています。
サイト上の地図をクリックするだけで工程の確認ができ、印刷して山に持っていくこともできるためとても便利。
登山計画書を他の会員と共有することもできるため、メンバー同士の連絡ツールとしても使えます。
ワード・エクセルの登山計画書フォーマットをダウンロードする
インターネット上では、ワード形式・エクセル形式の登山計画書フォーマットをダウンロードすることができます。
フォーマットに従って空欄を埋めていくだけで登山計画書の作成ができるため、初心者の方には心強いものです。
検索すればいくつかヒットしますので、使いやすいフォーマットを選んで作成していきましょう。
登山計画書の提出が義務付けられている山もある
登山計画書を提出せずとも登れる山もありますが、中には提出が義務化されている地域も。
いずれも中級者から上級者向けの山が対象となっていますが、登山計画書がいかに大切なものかがわかります。
提出が義務付けられている山
安全登山推進重点区域
「安全登山推進重点区域」に該当する山では、令和元年から登山計画書の提出が義務となりました。
安全登山推進重点区域に該当するのは、「富士山」「八ヶ岳」「南アルプス」の3つ。
日本国内でも標高の高い山ばかりであるため、遭難した時のリスクも高いと考えられます。
ご自身の命を守るためにも提出を行ってください。
条例による提出義務があるエリア
「安全登山推進重点区域」として指定されていないものの、都道府県の条例により登山計画書を提出する義務がある山も存在します。
該当するのは、群馬県谷川岳・岐阜県北アルプス・長野県・富山県の山。
管理されている対象山域において条例違反をした場合は、罰金や科料などの罰則も用意されているため、該当の山に登る際には必ず登山届を出しましょう。
しっかりと登山計画を立てて安全な登山を楽しもう!
登山計画書の届出は、救助のスピードを早めるだけでなく、忘れ物防止・遭難防止にも大きな役割を果たします。
メンバーの情報や連絡先、安全装備の有無などを警察に届け出るだけで、自分の命の行方が左右されると言っても過言ではありません。
最近ではアプリやインターネットを利用して、以前よりも短時間で作成できるようになった登山計画書。
提出が義務化されている危険地区ではもちろんのこと、その他の山でも必ず提出し、安全な登山を目指しましょう。
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