テント泊をともなう登山で必需品となるのが寝袋です。
登山用品は高機能・高品質なアイテムが多いですが、朝晩の冷え込みが厳しい山で眠るためには、そのときどきの山の環境に適した寝袋を選ぶことが大切。
今回の記事では、登山初心者の方に向けて寝袋の選び方を解説した後に、おすすめの登山用寝袋をシーズンごとにご紹介します。
登山用寝袋は多くのメーカーから発売されているので、予算にあった手頃な価格内で寝心地の良いモデルを見つけるための参考にしてください。
登山の寝袋はどう選ぶ?正しいシェラフの選び方5つのポイントをチェック
それではさっそく、登山で使う寝袋の選び方を見ていきましょう。
主なチェックポイントは5つです。形状や素材、利用シーンなどを考えて選べば、きっと快適な寝袋を手に入れられるでしょう。
寝袋の選び方ポイント1:まずは形状から選ぼう
登山で使う寝袋を選ぶときの第一のポイントは形状です。
寝袋には「マミー型」と「レクタングラー型」の2種類があるので、まずはそれぞれの特徴を押さえましょう。
マミー型
「マミー型」とは全身を覆うような形状の寝袋のことです。
頭の周りは丸く大きく作られており、足元に向けて細くなる形状をしています。
横になってファスナーを閉めれば寝袋がピッタリと体に沿うため温かく、省スペースで利用できるタイプです。
レクタングラー型
「レクタングラー型」とは長方形の寝袋のことです。
2枚の布を封筒のような形に縫い合わせており、布と布の間に挟まって寝られることから、普段使っている布団と近い感覚で寝られます。
寝返りを打ちやすく、ファスナーを全開にすればブランケットとしても使えるなど柔軟性に使えるタイプの寝袋です。
寝袋の選び方ポイント2:利き手側にある?ファスナーやジッパーの位置を確認
登山用寝袋の形状を決めたら、次はファスナーやジッパーの位置を確認しましょう。
ファスナーやジッパーの場所は、右側・左側・センターと製品により異なります。
あまり重要でないと感じられるかもしれませんが、出入りのしやすさを考えるなら利き手側にファスナーがあるモデルを選ぶのが無難。
「RZ」が右利き用、「LZ」が左利き用として作られているので、購入の際には必ずチェックしてください。
寝袋の選び方ポイント3:使い勝手を決める中綿素材も必ずチェック
登山用寝袋において中綿の素材は非常に重要なポイントです。
暖かさはもちろんのこと、お手入れのしやすさや使い勝手の良さも考えて選ぶことをおすすめします。
保温性&軽量性を重視するなら「ダウン」
「ダウン」は登山用寝袋の中綿として主流で、保温性があり軽量であることが魅力。
ただし水濡れに弱く、雨天時には暖かさを確保できないところが弱点です。
暖かさの目安はダウンの体積である「FP」表記で示され、数値が大きい寝袋ほど暖かさに優れ冬山で重宝します。
速乾性が高く自宅で簡単に洗濯できる「化学繊維」
「化学繊維」が中綿であれば、速乾性が高く自宅での洗濯も可能です。
水濡れに強く濡れても乾きやすいため雨天時でも使いやすく、ダウンに比べて価格も抑えられています。
ただしダウンのおよそ2倍の重量があることから、軽量性は期待できません。
ダウンと化学繊維の長所を組み合わせた「ハイブリッド」
中綿に使われるダウンと化学繊維にはそれぞれ長所と短所がありますが、それぞれのメリットを組み合わせたのが「ハイブリッド」と呼ばれる中綿です。
水濡れへの強さと暖かさが両立されており、化学繊維の中綿より軽量なため登山の寝袋として最適。
ダウンと化学繊維の短所が気になるなら、ハイブリッドタイプを選んでも良いでしょう。
寝袋の選び方ポイント4:快適使用温度&対応シーズンを確認
登山で快適に眠るには、「快適使用温度」と対応シーズンの確認も欠かせません。
寝袋には「下限使用温度」が表示されていますが、下限使用温度に5~10℃をプラスした気温が快適使用温度です。
選ぶ際には、製品ごとの対応シーズンと快適使用温度を基準に選んでください。
夏対応登山用寝袋の特徴と快適使用温度
夏利用のために作られている寝袋は下限使用温度が5~10℃となっていることが多いため、快適使用温度は10~20℃前後。
夏の里山や低山のキャンプで、キャンプ場が少々暑いと感じられる季節でも、夏対応の登山用寝袋で快適に眠れるはずです。
冬対応登山用寝袋の特徴と快適使用温度
冬登山での利用を前提とした寝袋は、下限使用温度が-5℃前後であり0~5℃の気温でも快適に眠れます。
冬の低山や秋の終わり頃の八ヶ岳登山には冬対応の登山用寝袋を選ぶのがおすすめ。
ただし冬山なら下限使用温度が-20℃以下に設定された寝袋を選んでください。
また、初心者の方は多少余裕を持って寒さ対策を行う方が安全です。
3シーズン対応登山用寝袋の特徴と快適使用温度
3シーズンに対応する登山用寝袋は、-5~5℃が下限使用温度となっており、0~15℃までの気温に対応します。
春・秋の里山での利用はもちろんのこと、夏の日本アルプスなどにも対応。少し涼しい程度の時期に登山をするとき大活躍してくれます。
あらゆるシーンでの登山を視野に入れるなら、ひとつは持っておきたいタイプです。
寝袋の選び方ポイント5:重さ&コンパクトさも大切な要素
登山用寝袋の選び方として最後にご紹介するのは、軽さとコンパクトさです。
なるべく荷物を減らしたい登山において、寝袋は中でも大型の荷物となります。
機能性を確認するとともに、なるべく軽量・コンパクトで、かさばらないタイプの寝袋を選んでください。
登山におすすめの寝袋6選!シーズンごとに選べる良コスパモデルをランキングからピックアップ
それでは実際に、登山におすすめの寝袋を6アイテム、シーズンごとに見ていきましょう。
登山初心者の方でも間違いない寝袋選びができるよう、登山者から人気の高いアイテムを厳選してご紹介していきます。
【夏向け】おすすめ登山用寝袋
まずは夏向けの登山用寝袋です。
2アイテムをご紹介するので、寝袋の選び方として解説した項目をチェックしながら選んでください。
【モンベル】アルパイン ダウンハガー650 #5
まずはアウトドアメーカーとして人気のモンベルから、夏の縦走や登山に最適とされている寝袋をご紹介します。
夏向けとされていますが、使用可能温度は3℃まで、快適使用温度は8℃と気温の低い場所でも利用できます。
「スーパースパイラルストレッチシステム」を採用した生地で寝袋自体の伸縮性が高く、どのような寝姿勢でも圧迫感がありません。
中綿は650FPのダウンながら、575gと重量も比較的軽量です。
【タケモ】スリーピングバッグ 2
登山用寝袋専門のメーカーであるタケモ。
「スリーピングバッグ 2」は劣化しにくい生地を使用し保温性に優れているにも関わらず、価格が安くコスパに優れていることから人気です。
中綿はダウンで750FP。最低使用温度は8℃となっています。
重量は500gで収納すれば直径13cm、長さ25cmにまで小さくなるので携帯性にも優れた寝袋です。
【冬向け】おすすめ登山用寝袋
次にご紹介するのは、冬向けの保温性に優れたおすすめ登山用寝袋です。
厳しい寒さの中でも快適に眠れるよう、しっかりと防寒対策が施されているモデルをピックアップしました。
【モンベル】アルパインダウンハガー800 #0
モンベルの「アルパインダウンハガー800 #0」は、800FPの」ダウンを使用しており、国内であれば3,000m級の高さの冬山でも耐えられるほどの保温性を兼ね備えるモデルとして開発されました。
表面の撥水加工により雪の中でも安心して使用可能。
「スパイダーバッフルシステム」によりダウンの偏りを防いでいるので、いつ使ってもふんわりと柔らかな寝心地です。
【ドイター】寝袋 ネオスフィア-15 ダウン675Fシュラフ
続いてはドイターから、最低使用温度-15℃の登山用寝袋です。
国内の初冬3,000m級の登山から真冬の中級山岳での登山にまで対応しています。
体にピッタリとフィットする形状になっており、外気の侵入も強力にシャットアウト。
1,590gと重量はあるころが欠点ですが、コンプレッション機能付きのスタッフサックが付属しているので、コンパクトな状態で持ち運びできます。
【3シーズン対応】おすすめ登山用寝袋
それでは最後に、3シーズンに対応した登山用寝袋の中から、特におすすめのモデルを見ていきましょう。
3シーズン対応モデルは製品数が多いですが、その中でも特に使いやすさに優れているものをご紹介します。
【ナンガ】オーロラ500
「オーロラ500」はナンガの定番である「シュラフカバーのいらない登山用寝袋」です。
構造がシンプルなゆえに使い勝手が良く、価格が抑えられているため登山初心者の方が初めて購入する寝袋として最適。
使用下限温度-4℃、快適使用温度1℃となっており、真冬以外の3シーズンで快適に使用できます。
パープル・レッド・イエロー・グリーンとカラフルな色が揃っているので、カラーを選ぶ楽しみも感じられるモデルです。
【イスカ】エアドライト 480
「暖かさを逃さない」ことに徹底した作りになっているイスカの「エアドライト 480」は、とにかく温かく眠りたいという登山者から人気のシュラフです。
肩や顔まわりの隙間をなくすことで体温を逃さず、通気を遮断する工夫が施されていて効率よく中を暖めます。
表側には耐久性・耐摩擦性が高いコーデュラ、内側には保温性の高いドラフトチューブを採用。
足元のダウンは多めになっているため、足先が冷えやすいという方でも快適に眠れるはずです。
さらに快適に眠るなら登山用寝袋マットも準備しよう
おすすめの登山用寝袋をご紹介してきましたが、さらに快適な睡眠を求めるならマットを併用して、寝心地を調整してみてはいかがでしょうか。
マットがあればごつごつした地面の上でも、自宅の布団の中にいるような感覚で眠れます。
【サーマレスト】プロライト
サーマレストは寝袋マットメーカーとして登山者から高い人気を誇ります。
癖のない初心者向けのモデルで、2.5cmの柔らかすぎず程よい硬さのマットがちょうど良い寝心地だと評判です。
510gと軽量なため登山に持っていきやすく、3シーズンに対応しています。
【ニーモ】マット・パッド ゾア レギュラー
ニーモの「マット・パッド ゾア レギュラー」は、380gと非常に軽量であることが魅力。
収納時のサイズは直径11cm、長さ23cmとペットボトルより小さいので、登山用のシュラフやマットは、シンプルで重さの軽い方が良いと考える方にとって理想的なモデルです。
超軽量ながら「2アクシスコアリング」という肉抜き加工により高い保温性も確保しています。
【エクスペド】シムマット XP 7 M
「シムマット XP 7 M」は中綿としてマイクロファイバーが使われているので、軽量ながら柔らかく、暖かな寝心地です。
対応下限温度は-17℃となっており、厳しい冬山のお供としても最適。
5年間の保証もついているので、少々高額でも品質が良く、長く使える登山用マットを探している方におすすめします。
寝袋&マットで登山でも快適な睡眠を!夏の雪山や冬山でもシュラフがあれば安心
山小屋で眠るなら別ですが、宿泊を伴う登山には安全な睡眠を確保する役割を持つ寝袋やマットは必需品です。
ご紹介したモデルを選択肢のひとつとして、ご自身の使用シーンに最適な登山用寝袋を選んでください。
今回の記事では6つのモデルをご紹介しましたが、中には人数の多いキャンプや家族用として、連結して広く大きく使える寝袋も販売されています。
コンパクトな寝袋マットなら登山だけでなくツーリングや車中泊などでも活躍してくれるはず。
使うシーンごとに必要な寝袋を調節して、心地よい睡眠で疲れた体をしっかりと癒せるようにしましょう。