山歩きから登山の世界に入門した人は多いはずです。その後徐々にステップアップし、登山道が整備された山であれば大体クリアできるようになったという人も相当数いるでしょう。
そのような、いわゆる初級者から中級者へとランクアップする際に避けて通れないのが「岩場」という関門です。
ある程度の山になると、これまでのような二足歩行だけではどうしてもクリアできない箇所というものが出てきます。その代表格が岩場です。
絶壁を登るロッククライミングほどの作業ではないにせよ、岩場は四肢をうまく役割分担させてバランスを取らなければ決して登れません。
そこで今回は、岩場の攻略法をお伝えします。これをマスターすれば中級者への道がグッと近づいてくるでしょう。
攻略の要は「三点支持」
書き出しでは四肢を役割分担させると述べました。それでは具体的にどうするかというと、両手・両足を4つの支点とみなし、うち3つの支点を固定させて残る1点を動かしながら攻略していくというものです。
これを「三点支持」と呼んでいます。岩場の突起、割れ目、あるいは手足を置けそうなポイントを探し出し、支点を3つ用意できれば準備完了。理論としては極めてシンプルです。
ただし腕と足の長さは異なりますし、体幹の強さも人それぞれです。
視界も確保する必要があるでしょう。このため、ただ手足を3点置けばよいというものでもなく、できるだけ力の入れ方に無理がなく危険の少ないポイントを探す力が要求されます。
これが三点支持を有効に使いこなすのに必要なセンスであり能力です。
余談ですが、三点支持を状況に応じて最適な形で運用していく能力を突き詰めていったものがロッククライミングであるといえるでしょう。
それだけ三点支持は重要な基礎技術であるともいえます。
足の使い方こそがポイント
三点支持が理解できたところで、次のステップです。
岩場で体を引き上げる際にカギとなる部位は、腕ではなく「足」です。人間の胴体を支えているのは腕ではなく、足であることを考えるとわかりやすいですね。
三点支持を運用するに当たり、体の上部にあるという理由からつい腕に体重をかけてしまいがちですが、腕は補助的に使うのが正解です。
腕で体を支えるポイントを2つ探し、体重をかけても崩れたり落ちたりしないポイントに片足を置いたら、後は体を一気に引き上げるだけです。
残る片足を体を引き上げた先に置けば、見事に次の舞台へと到達します。
ここでのポイントは、下を向いた時に足の位置が見えるよう視界を確保することです。
岩場が迫った場所で腕を胸元に近い距離に置くと、下を向いた時に足元が見えず足の置き場に困ってしまいます。
そのため、手を置く際には腕を少し伸ばすようにする方がよいでしょう。体と岩の間に空間ができて見渡しが良くなり、足場の確保もしやくすくなるはずです。
ロープと鎖、使用上の鉄則
岩場にはロープや鎖が設置されている場合があります。このように珍しいものが目に入るとすぐに掴みたくなるのが心情ですが、しかしここで鉄則があります。「ロープや鎖は1人で1本ずつ使う」というものです。
1本のロープを例に取りましょう。これを複数の人が同時に掴むとどうなるでしょうか。
それぞれ力の入れ方や体重、バランス感覚も異なります。
また手繰り寄せる方向やタイミングも少しずつ違うはずです。このため1人がバランスを崩したり、思わぬ方向に引っ張ったりした場合、他の利用者からすれば自分の掴んでいるロープが急に振られてしまうことになります。
こうなると不意に体が引っ張られるため、バランスを崩す可能性が高く非常に危険です。
なお、杭などでロープや鎖がいくつかの区間に区切られている場合もあります。この場合は1区間ごとを1人が利用するようにしましょう。
また「1人1本」の鉄則は仲間内だけでなく、マナーとして他の登山客に対しても厳守しましょう。
ちなみに山梨県にある岩殿山を例にとると、山頂の西側に位置する尾根道の岩場にロープと鎖、さらにステップが取り付けられています。
さながら天然のアスレチックのような造りになっており、岩場の入門用としてもオススメできます。
まとめ
岩場の攻略法を述べてきました。簡単にまとめると以下のようにごくシンプルな内容です。
- 三点支持を有効活用する
- 三点支持をうまく使うには足が大事
- ロープや鎖は1人1本が鉄則
岩場というとハードルの高いものに思えますが、簡潔にまとめれば攻略法自体は決して複雑ではないことがおわかりいただけるでしょう。