「ランニングは健康や美容に良い」と言われる一方で、「老化を早める」「痩せない」という噂を耳にすることもあると思います。
ダイエットやアンチエイジングのためにランニングを始めたいと考えているなら、本当に走って良いのか迷ってしまうはず。
そこで今回の記事では、「ランニングで老化する」「ランニングで痩せない」という2つの噂について、研究者の論文を元に真偽を検証していきます。
ランニングで老化が加速するって本当?7つの研究論文から噂の真偽を徹底検証!
それではまず、ランニングを習慣にすると老化するという噂の真偽から確かめていきましょう。
ランニングと老化に関する7つの研究論文をピックアップして、ランニングで老化が早まる可能性について探っていきます。
ランニングで活性酸素とコルチゾールが生成される可能性がある
最初にご紹介するのは、2つの論文による「ランニングで活性酸素とコルチゾールが生成される」という報告です。
活性酸素とは細胞の老化を促進させる物質で、コルチゾールとはストレスホルモンとも呼ばれる物質です。
活性酸素は呼吸によって酸素を吸い込み、代謝させることによって発生するため、酸素を多く取り入れる運動によって生成量が多くなります。
また、強度の高い無酸素運動を行うと、コルチゾール分泌量が増えるという報告も。
活性酸素とコルチゾールが増加するという観点からは、「ランニングは老化を早める」と考えられます。
参考2:JSTAGE:生理的指標を利用したアスリートに対するストレス研究―内分泌指標の研究への適用
ランニング中の紫外線も酸化ストレスの原因になる
ランニング中に活性酸素が発生しがちなのは、取り込む酸素量の多さだけが原因ではありません。活性酸素は紫外線に当たると増加します。
朝ラン・昼ランで紫外線に当たっている人は、ランニングをしない人に比べて紫外線に当たる機会が増えることから、活性酸素の発生量が増え、老化につながりやすくなると言えます。
参考:放射線医学総合研究所:紫外線照射中に動物の皮膚で生成するフリーラジカルの測定に成功
活性酸素は必ずしも有害ではない
ランニングは細胞を老化させる活性酸素を増やす可能性があります。
しかし、活性酸素は必ずしも有害ではありません。
活性酸素は体にとって必要な物質であり、免疫力を高め感染症を予防したり、細胞間の伝達や分化などをサポートしたりする役割を果たしています。
「活性酸素=老化」と考えられることが多いですが、あくまでも活性酸素は、発生量が過剰になったときに細胞を傷つける物質です。
適度な運動量であれば活性酸素が過剰になるリスクは低いと言われているため、適度なランニングをする前提であれば「ランニングは老化を早めない」という結論になります。
ランニングによって体内の抗酸化・抗糖化システムが強化される
ランニングは活性酸素を発生させると言われる一方で、体内の抗酸化・抗糖化システムを強化するという報告もあります。
「運動に伴う活性酸素産生の功罪」という論文タイトルはまさにそのもので、運動は活性酸素を増加させながら、活性酸素を除去する能力を高めるのです。
人間の老化を早める要素には、活性酸素による「酸化」とタンパク糖化最終生成物による「糖化」の2種類が代表的ですが、ランニングには酸化と糖化の両方を軽減させる働きがあります。
酸化と糖化の両方の側面から見ると、ランニングは老化を早めるどころか「老化を予防する」とすら言えます。
ランニングをすると衰えやすい下半身の筋力が鍛えられる
ランニングでは下半身を中心に筋肉が鍛えられるので、年齢を重ねることによる筋力の衰えを予防できます。実は年齢により衰えやすいのは、上半身ではなく下半身の方です。
20歳と60歳日本人の筋肉量を部位別に比較すると、上半身や体幹はほぼ変わらないものの、お尻から下の筋肉量は年々低下すると報告されています。
つまり、加齢による筋力の衰えとは、下半身の筋力が衰えることによるものです。
下半身の筋肉を鍛えられるランニングは、筋肉の老化という観点からは「老化を予防する」と考えられます。
ランニングで膝の軟骨がすり減る可能性がある
ランニングには下半身の筋力を高める効果が期待できますが、一方で膝の軟骨をすり減らせる可能性も。
運動をすると身体を支える膝関節には大きな負担がかかります。
とくにランニングは、着地するときに体重の8~10倍もの衝撃がかかる運動であり、何回も着地をする動きを繰り返すことから年齢による膝の痛みにつながると考えられるのです。
運動で筋肉を鍛えると関節の安定性が増しますが、ウォーキングや水泳などと比べるとランニングは関節にかかる負担が大きい運動です。
膝関節を酷使する運動であることを考えると、ランニングは「老化を早める」と言えます。
ランニングによって脳の老化を予防できる
最近の研究によると、ランニングなどの運動の刺激は脳の老化を予防し、神経新生機能を高めると報告されています。
加齢によって記憶力が低下するのは、海馬という記憶力を司る部分にある神経幹細胞の数が減るため。
しかし研究によると、運動で体に刺激を与えると、老化した脳が活性され認知機能が高まるそうです。
脳の活性化に効果的だとされる運動は、ストレスを感じない程度の軽いランニング。
つまりランニングなどの有酸素運動は、「脳の老化を予防する」働きを持ちます。
結論:ランニングで老化が促進されるとは言い切れない
論文の情報を元に7つの観点から、ランニングと老化の関連性についてご紹介しましたが、結論としてはランニングで老化が早まるとは言い切れないとなりました。
活性酸素が生成されやすくなる、膝関節の軟骨がすり減るというリスクはあるものの、抗酸化・抗糖化システムや筋肉の強化、脳神経新生機能の向上などの報告を考慮すると、むしろアンチエイジング効果がある運動です。
ランニングでは痩せないって本当?運動をしても痩せない3つの理由とは?
それでは次に、ランニングをしても痩せないと言われる理由について検証していきます。
有酸素運動であるランニングにはダイエット効果があるとされますが、実際に取り組んでみると、なかなか痩せない…と訴える方も少なくありません。
コルチゾールの発生によってストレス食いをしてしまう
ランニングで痩せない理由として考えられるのが、コルチゾールの分泌量が多くなり、ストレス食いをしてしまうことです。
コルチゾールは最初に解説したように、ストレスを感じると分泌されるホルモン。
ストレスが溜まるとつい食べてしまうという方の場合、ランニングでエネルギー消費量を増やしても、食事量の増加により摂取エネルギーが増えているというケースがあります。
また、コルチゾールには体内に脂肪を溜め込む働きもあります。
ストレス食いで食事量が増え、さらにコルチゾールの脂肪蓄積作用が働いた結果、ランニングをしているのに太ってしまう…という事態に陥る可能性もあるでしょう。
筋肉量が減少して基礎代謝が低下する
ランニングを毎日しているのに痩せないという場合は、筋肉量が減少して、基礎代謝量が低下したことが原因かもしれません。
ランニングのエネルギー源は糖質や体脂肪だけでなく、筋肉にも及びます。
筋肉量を増やすためには、運動で損傷した筋線維を超回復によって太くしなければなりませんが、超回復には2~3日間の休息が必要です。
つまり、筋肉痛の状態で毎日持久性運動をしていると、エネルギー源として筋肉を消費しているにもかかわらず筋肉疲労の回復は行われず、少しずつ筋肉量が減ってしまうという結果になりかねません。
有酸素運動ではなく無酸素運動になっている
速いスピードでランニングをしている方なら、有酸素運動ではなく無酸素運動になっていてダイエット効果が現れない可能性もあります。
体脂肪がエネルギー源として燃焼されるのは有酸素運動です。
ランニングの運動強度を高くしすぎると、無酸素運動になり脂肪燃焼の効果が低下するため、ペースを緩めて走ってみてはいかがでしょうか。
ランニング・ジョギング・ウォーキングで痩せながら老化を予防するための対策方法
ランニングやジョギングなどの有酸素トレーニングを老化予防やダイエットに役立たたせるためには、走り方や生活習慣のポイントを守ることが大切です。
こちらの項目ではランニングで痩せたという方が実践している6つのポイントをご紹介します。
まずは食生活に気をつける
ランニングで発生する活性酸素を抑え、理想の体を作っていくためにはまず食生活を改善することから始めましょう。
意識するべきは、抗酸化物質・糖質・たんぱく質とエネルギー収支です。世界的に話題となったシリコンバレー式ダイエットでも、食事は人生を変えるほど重要だと言われていました。
食材から抗酸化成分を摂取して活性酸素除去
体内で発生した活性酸素は、食品中に含まれる抗酸化成分によって除去効果を高められます。
抗酸化成分を多く含む食品は、りんご・ブルーベリー・ココア・緑茶・緑黄色野菜・トマト・大豆製品・ゴマ・エビ・カニなど。
全般的に果物や野菜には抗酸化成分が多く含まれるので、植物性食品を積極的に摂るようにしてください。
糖質を控えてタンパク質を多めに摂取
ランニングで痩せないという問題を解決するためには、糖質摂取量を控え、タンパク質を多めに摂るようにしましょう。
糖質は運動や活動のエネルギー源として欠かせない栄養素ですが、摂りすぎると脂肪として蓄積されます。そして、タンパク質は筋肉の修復に必要です。
肉・魚・大豆製品・卵・乳製品などタンパク質を豊富に含む食材を毎食欠かさず食べ、夜はごはん・パン・麺類などの糖質を抜く食生活が理想的。体づくりのためには、運動と栄養摂取のバランスがポイントです。
摂取カロリーを消費カロリー以内に抑える
ダイエットの基本は、消費カロリーが摂取カロリーを上回ることです。
必要な栄養素は摂取しなければなりませんが、摂取カロリーは抑えられるように低カロリー食品を選び、食事量を調整するようにしましょう。
ランニング後は足裏をマッサージする
土踏まずの近くには、活性酸素の生成とコルチゾールの発生を抑制するツボがあります。
ランニング後は足裏も疲れているでしょうから、ストレッチが終わったらツボ押しローラーやゴルフボールなどで足裏をケアしましょう。
脚の疲れを取りながら老化予防ができ、さらにダイエット効果も高まるのでおすすめです。
スロージョギングでゆっくりと走る
ランニングで活性酸素が発生する、痩せないなどと言われるのは、運動強度が高すぎるためです。
あくまでも適度な運動の範囲内であれば、ランニングには老化予防効果やダイエット効果が期待できます。そこでおすすめしたいのがスロージョギングです。
スロージョギングとは、ウォーキングと同じくらいの速度で走る運動のこと。
体への負担が少ないながら、ウォーキングの2倍もの脂肪燃焼効果を持つとされています。
膝関節への負担も軽減されるので、ご高齢の方や運動不足気味の方はスロージョギングから挑戦してみてください。
ランニング後に筋力トレーニングをする
ランニング後に筋トレをすると、活性酸素の増加による酸化ストレスへの抵抗性が高まり老化予防に役立つとされています。
筋トレは筋力アップや骨量増加にも役立つ運動。運動による活性酸素の増加や筋肉量の減少による基礎代謝量低下だけでなく、年齢による骨量減少を食い止めるための対策としても有効です。
紫外線予防を入念にしてランニングをする
ランニング中の活性酸素生成を抑制するためには、しっかりと紫外線対策をすることも欠かせません。
紫外線は年間を通していつでも降り注いでいます。ランニングをするなら日焼け止めを塗り、できれば長袖のシャツやアームカバーなどを着用し、紫外線を予防しましょう。
日常生活で活性酸素発生要因をなるべく避ける
活性酸素はランニングや紫外線だけで発生するわけではなく、日常生活の中でも日々生成されています。
ランニングの影響による老化を予防するには、日常生活でも活性酸素の原因を避けるようにしましょう。活性酸素発生の3大要因であるタバコ・アルコール・ストレスは避けてください。
「ランニングにハマると老化が加速する」という噂は嘘?適度な有酸素運動はアンチエイジングに効果的
「ジョギングをすると老ける」という噂は全くの嘘ではありませんが、真実でもありません。
ランニングは健康維持や生活習慣病予防にも効果的ですし、抗酸化・抗糖化システムや脳の認知機能を高めるためにも役立つ運動です。
血流が良くなるので、全身に酸素や栄養素を届けやすくなる効果も期待できます。
ただし、マラソンなどの長距離走後、筋肉が熱や痛みを持っているときは要注意。
しばらく練習を休んで、ヨガのポーズや部位別トレーニングに挑戦しながら筋肉を休ませましょう。
自分の体に負担をかけすぎないことが、ランニングで老化予防やダイエットを成功させるための最大のコツです。